廃トンネルの100mババア──“その何か”に、僕らは出会った。

@takapapa0716

第3話

序章:封鎖されたトンネルに潜むもの


「100mババア」──


そんな名前の怪異を、聞いたことがあるだろうか。

全国各地に似たような都市伝説が存在する。

“テケテケ”や“ダッシュババア”、“50mババア”なんてのもある。

どれも共通しているのは、「めちゃくちゃ速く追いかけてくる何か」ということだ。


──そして僕たちの街にも、確かに“それ”はいた。


舞台となるのは、海沿いのとある廃トンネル。

数年前までは使われていたけれど、すぐ横に新しいトンネルができてからは完全に封鎖され、人の気配は絶えた。

ところが最近、「そこにババアの霊が出る」という噂が流れ始めていた。


またしてもマメが、例の“ガチめの怖い雑誌”を持ってくる。

なんとそのトンネルが、実際に雑誌にも載っていたのだ。


「これはもう、調査するしかないっしょ!」

マメは興奮気味に言う。──が。


……マメよ。

前回の帰り道、お前のズボンの前が濡れてたの、僕は知っているぞ?



本編:夕暮れの突入作戦


それでも、僕たちは懲りずに出かけることにした。

自転車で片道40分。目的地に着いた頃には、日も傾きかけていた。


トンネルは、夕方でもうっすらと暗く、近づくだけで冷たい空気が肌を撫でる。

それだけで、ここが“普通の場所じゃない”ことがわかる。


そして日が暮れた頃、僕たちは中へと足を踏み入れた。


一番張り切っていたはずのマメは、なぜか膝をガクガクさせながら、不自然な歩き方で進んでいく。

……マメよ。

その動き、お前のほうがよっぽど妖怪っぽいぞ。


トンネルの中ほどまで来たとき、マメが突然立ち止まり、叫んだ。


「出てこいババア! 僕たちはここにいるぞ!」


──その直後だった。


ゴォォォ……


突風のような風が吹き抜け、どこからともなく水の滴る音が聞こえてくる。

ピチョン……ピチョン……。


カビ臭さが一気に濃くなり、空気がじっとりと湿り出す。

遠くの闇から、低い唸り声のような音が響いた。

何かが、こちらを見ている。

そう直感した僕たちは、先へ進むのをやめて、引き返すことにした。



遭遇:背後にいた“それ”


トンネルの出口が見えたその瞬間──

背中に、ぞわりとする気配を感じた。


反射的に振り返る。


そこには──

小さな“何か”が、こちらをじっと見て立っていた。


「でたぁぁーーーっ!!」


マメが絶叫し、涙目で猛ダッシュ。

他のメンバーも一斉に叫びながら逃げ出す。

僕も、何度も振り返りながら走った。


“それ”は、動かず、ただそこに立ち尽くしていた。

遠ざかる視界の中で、じっと、動かず。

そして──闇に溶けるように、姿を消した。



終章:あれは何だったのか


外へ出た僕たちは、肩で息をしながら地面に座り込んだ。

マメは叫んだ。


「今の、ババアだよ! 絶対そうだって!」


……いや、お前カメラ首から下げてたろ?

なぜ一枚も撮ってないんだ。


その後、「あれはイタチだったんじゃないか」という結論に落ち着いた。

──イタチ、多すぎじゃない?

もしかして、ここってイタチの保護区か?


でもね、本当にいたんだよ。

“人じゃない何か”が。


小さくて、じっとしていて、だけど決して普通の生き物には見えなかった。

あれが“100mババア”なのかどうかは、正直わからない。


……だから、あえて考えないことにした。



次回予告


第4話:「口裂け女と人面犬」

街の学校周辺で相次いで目撃される、“裂けた口”の女と“言葉を話す犬”。

それはまるで、ふたつの怪異が“同じ夜”に何かを狙っているかのようだった──

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