私の光

たちばな かん

私には貴方だけだった


唯一の未来だった


なのにどこかへ行ってしまった


一人を残して前を向いていた


果てしなく続く暗闇に襲われた


陽の光も入らない湿った空気


床の色も忘れてしまう


息がつまり、目と頭が熱をもつ


支えられないほどの重さに天を仰ぐ


隅には虫が這っている


どうしようもない虚脱感


ただぼんやりとみえる自分が不思議だった


翌日は立ち上がることが出来た


雨にさらされ色あせた箱を開ける


ささくれた縄を優しく撫でる


貴方と出会う扉だった


あまりに愛おしくて抱きしめた


もう連絡の来ない携帯を充電した


留守番電話で会いに行くと伝えた


これなら道に迷うことは無いでしょう


家の場所も、今まで巡った思い出も


いつもふらついていた貴方でも


現世でも、死後の世界でもすぐに会えるように


また私を愛してくれるように


つかない電気の蓋を外す


丁寧に縄をくくり見つめる


脚のぐらつく机に乗り首にかける


また私は後悔した


もがけど首が締まるだけ


最期に見えたのは弱い光だった

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私の光 たちばな かん @citrus7

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