第15話 『生産型移動要塞』計画、始動!

リリアーナ王女の病が奇跡的に治ってから、数週間が経ったんや。

ミオの工房は、毎日が大賑わいやったわ。

王族からの感謝状が届いたり、貴族から「娘の病を診てほしい」とか「家宝を直してほしい」とか、新たな依頼が山積みや。その依頼書は、ミオの机の端に、まるで小高い山のようやった。

(うぅ、引きこもりたいのに、どんどん仕事が増えていく……!)

ミオは、ふかふかのソファに埋もれて、資材スライムたちをモフモフしながらため息をついた。

「ぷるる~?」

スライムたちが、心配そうにミオの顔を覗き込む。水色のスライムが、ひんやりとした体を頬に寄せてくれた。


ドワーフの熟練職人、ゴルムはんも、工房の常連になってくれたんや。

最初はミオの「魔法での生産」に反発しとったゴルムやけど、ミオが作った『万能魔導ハンマー』の品質に衝撃を受けて、もうミオの技術の虜や。

毎日工房に来ては、「ミオ殿!この機構は一体どうなっとるんじゃ!?」「この素材、ワシの鍛冶では扱えぬ!」って、目をキラキラさせながら質問攻めにしてくる。

資材スライムたちが、ゴルムの要求する素材を「ぷるっ!」と目の前に出してやるたびに、ゴルムは「なんじゃと!?素材を喰うだと!?しかも、一瞬でこれほどの純度を!」って、いちいち驚愕して頭を抱えとる。

(ほんま、リアクションが面白いおっちゃんやなぁ……)


そんなある日の午後。

工房に、アルフレッド王子がやってきたんや。いつもの優雅な雰囲気やけど、その表情は少しだけ真剣やった。

「ミオ殿。そなたに、新たな依頼がある」

王子がそう言うと、ミオの胃がキリッとなった。

(えぇ~、また面倒なやつ!?頼むから、美味しいお菓子作ってくれとか、そういう依頼にしてぇや……!)

王子の依頼は、グランベルク王国の辺境、「ドラゴンの峰」の治安維持のための「移動可能な拠点」を作ってほしい、というもんやった。

ドラゴンの峰は、王国でも特に治安が悪くて、冒険者ギルドでもSランク級の危険地帯や。魔物の群れや、大規模な山賊団が出没するらしい。その話を聞くだけで、ミオの背筋が凍りそうになる。

「そこに常駐する拠点がなければ、民の安全は守れぬ。だが、王国の予算と技術では、移動可能な要塞など、夢物語でしかなかったのだ」

アルフレッド王子は、苦渋の表情で語る。彼の顔には、民を思う心が滲み出ていた。


ミオは、目を閉じて、頭の中で設計図を広げた。

(移動可能な拠点かぁ……。せやったら、もう『動く工房』作っちゃえばええやん!前世で見た、あの巨大な移動都市とか、戦艦みたいなの……。誰も見たことない、最強にワクワクするやつ作ってみたいなぁ!)

ミオの『究極の生産』能力と、資材スライムたちの能力を組み合わせれば、不可能やない。

資材スライムは、あらゆる素材を精錬・加工できる。そして、彼ら自身が、運搬も建設もしてくれる。

(よっしゃ、これや!『生産型移動要塞『フロンティア号』』の計画、始動や!)

ミオの瞳が、きらめいた。その輝きは、まるで新たなオモチャを見つけた子供のようや。

「承知いたしました。最高の『動く工房』、作ってみせますわ!」

ミオの言葉に、アルフレッド王子は目を見開いて驚いた。彼の口が、半開きになったままだ。

「な、なんと!?移動可能な要塞を、そなたが!?しかし、それは国家の技術をもってしても……」

王子は、ミオの言葉が信じられないといった様子やったわ。彼の顔には、驚愕と、かすかな畏敬の念が浮かんでいる。

(別に要らんけどなぁ……でも作ってみたいやん?うちの手ぇ、なんや知らんけど、そーいうの作るためにある気ぃするねん。)

ミオは、心の中で呟いた。これが、生産者のロマンっちゅうやつやな。


工房の仲間たちも、この壮大な計画に驚きを隠せない。

「移動要塞だと!?そんなもの、本当に作れるのか!?」

ライオスが、興奮して叫んだ。彼の声は、喜びで震えている。

「もしそれが完成すれば、辺境の治安は劇的に改善される。そして、我々の活動範囲も広がる!」

シエラも、冷静ながらも興奮している。彼女の目は、未来の可能性を見据えているかのようだ。

フィオナは、ミオの顔を心配そうに見つめる。

「でも、ミオさん、無理はしないでくださいね。そんな巨大なものを作ったら、またぐったりしちゃいますよ……」

ルナリア姫は、目を輝かせながらミオを見ている。

「ミオよ!それは面白そうだ!私も手伝おう!未知の素材、喜んで見つけてくるぞ!」

ゴルムも、目を爛々と輝かせた。

「ほほう!移動要塞だと!儂の知らない技術が詰まっているに違いない!ぜひ、その構造を学ばせてくれ!」

工房の中は、それぞれの興奮と期待で、熱気であふれかえった。


ミオは、仲間たちの反応に、ちょっと嬉しくなったわ。

(みんな、うちのロマンに付き合ってくれるんやなぁ。別に必要かどうかちゃう。作りたいから作る!それがうちのロマンやねん!)

ミオは、巨大な設計図を広げて、資材スライムたちに指示を出し始めた。

工房の周りには、色とりどりの資材スライムたちが集まってくる。彼らは、ミオの指示を待つように、ぷるぷると震えている。

茶色のスライムが地面を掘り、銀色のスライムが鉄骨を精錬し、緑色のスライムが巨大な木材を吐き出す。

「ぷるるるるーっ!」

スライムたちの可愛らしい声が、風薫る丘に響き渡る。

『フロンティア号』の建設が、今、始まったんや。

王都の空に、新しい巨大な影が生まれようとしていた。


---


次回予告


超巨大な移動要塞『フロンティア号』の建設が始まったうちの工房!

でも、建設には、まだ見ぬ希少素材が必要なんやて!?

資材スライムたちと、みんなで危険なダンジョンへ出発や!

そこで待ち受けるのは、一体なんやろか!?

次回、チート生産? まさかの農奴スタート! でも私、寝落ちする系魔女なんですけど!?


第16話 希少素材の探索とエルフ学者の誘い


お楽しみに!

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