Day24 爪先

 授業中、体育館のステージにもたれて靴紐の結び目を見ていたら、クリップボードでぽんと頭をたたかれた。


「顔をあげい、顔を」


 影山先生はこちらではなくまっすぐ前を見ていた。首筋に玉の汗が浮いている。

 ちょうどぽーんとボールがネットを飛び越え、バシッと音を立ててレシーブされたところだった。


 ボールはそのままコートを外れ、ぽてん、てん、と転がる。


「田崎、おまえな、下ばっかり見てると人間ちっさくなるぞ。胸を張って上をみにゃあ」


 下唇を少し噛む。そうですか、とだけ答えた。

 表の葉桜がさらさらと鳴り、木漏れ日を落とす。揺れる光がつま先を照らしていた。

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