『銀月の騎士と、魔女の誓い』

宇治ヤマト

『銀月の騎士と、魔女の誓い』

 遥かなる大陸「リュミエール」には、かつて神々が落としたと言われる七つの星石があった。

 それぞれが勇気・叡智・誓い・希望・絶望・破滅・そして再生の力を秘め、世界の均衡を保っていたという。


 けれど千年前、破滅の星石を手にした王が現れ、世界は一度、黒い炎に呑まれた。

 その王を討ったのが、「銀月の騎士」と「呪われし魔女」だった。



──────────────────────



 時は流れ、舞台は辺境の村・エイレネス。

 草原と湖の間にある小さな村に、一人の青年がいた。

 名は──アレスト・ルグラン。

 かつての騎士の末裔でありながら、今は家畜と畑を守るだけの、静かな生活を送っていた。


 だがある日、湖に光る隕石が落ちる。

 夜空を裂く青白い閃光──

 その翌朝、湖畔には、髪を白銀に染めた少女が倒れていた。


 少女の名は──セレナ・カリュプス。

 記憶を失っていたが、手にしていた古びた書には、こう記されていた。


 「星石、再び動く。七つの均衡、崩れし時──

再び銀月の血が、魔女と契りを結ぶ」




 アレストは戸惑いながらも彼女を介抱し、やがて彼女が何か「大きな運命」を背負っていることを知る。



──────────────────────



 旅立ちのきっかけは、村を襲った黒獣だった。

 それは星石の影響を受けた魔物──

 セレナは魔法でそれを撃退し、そして言う。


「貴方には、星の血が流れている。……アレスト、運命を選んで」


 逃げることもできた。

 けれど、アレストは剣を取った。

 祖父から受け継いだ、銀色に鈍く光る長剣──「エルシオン」を。

 剣の鍔には、見覚えのない魔法紋が浮かび上がっていた。



──────────────────────



 旅は過酷だった。

 帝国に追われ、盗賊に狙われ、魔獣に囲まれ──

 だが、セレナとアレストは少しずつ絆を深めていく。


「どうして、俺なんかを信じるんだ」

「信じてるんじゃないわ──願ってるの。貴方が、“あの時の騎士”のように在ってくれることを」


 その言葉に、彼は戦う意味を見出していく。


 やがて明らかになる真実──

 セレナは「魔女の転生者」であり、星石に選ばれし巫女だった。

 だが、彼女の命は、星石が再び目覚めれば、対価として捧げられる運命だった。


「お願い、アレスト。今度こそ、私を殺さずに済む未来を、見つけて──」



──────────────────────



 クライマックス、七つの星石が揃ったとき、

 世界は再び「選択」を迫られる。


 それは、破滅と再生。

 セレナを救うか、世界を救うか。


 けれどアレストは叫ぶ。


「どっちかなんて、選ばない! 俺は、どっちも救う!」


 その叫びとともに、星石は砕け──

 新たな運命の輪が回り始めた。



──────────────────────



 数年後。

 新たに築かれた自由都市では、ひとりの女魔導師が書店を営み、

 その傍らには、銀髪の騎士が、紅茶を淹れている。


 そして、夜空にはかつての七つの星に代わって──新たな、希望の星が輝いていた。


 それは二人が選び取った、

──「誰も犠牲にならない未来」。



fin



(原案・協力:久遠凪様)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『銀月の騎士と、魔女の誓い』 宇治ヤマト @abineneko7777

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ