第23話
月曜日
「昼休みお昼食べたら理科室集合」
流鏑馬同好会のグループLINEに春馬くんからメッセージが送られていたので、急いでお弁当を食べた私は理科室へ向かった。
理科室にはすでに海馬と顧問の鈴木先生がいた。
どうやら彼のテストの点数が良かったらしく、話が盛り上がっていたようだ。
すぐに春馬くんも到着し、私たちは本題へ移った。
「先生に確認したいことがありまして。」
「ほう。」
「流鏑馬同好会のことなんですけど、高校弓道連盟に入っていたりしませんかね…?」
「ちょうど先生からも聞きたいことがありまして。」
先生はそう言うと理科室の机の引き出し「全国高等学校体育連盟弓道部門」と書かれた封筒を取り出した。
「とりあえず、「弓道の大会に出たい」と言い出すと思っていたので体育連盟には加盟しておきました。」
「はぁ!」
「先生ナイス!」
「さすがです…。」
三人でそろって喜ぶと、先生は「ここからですよ」といって封筒の中身を取り出した。
「全国高等学校体育連盟弓道部門 流鏑馬大会のお知らせ」
どうやらここ数日の出来事は夢ではなかったようだ。私は思わず息を呑む。
『開催予定日 10月中旬
開催予定地 京都
参加者 当協会に所属する流鏑馬に秀でた学生30名程度(予定)』
「君たちもこの30人に含まれているということでよろしいかね?」
「はい!」
私たち三人はそろって返事をした。
「なるほど。では、三年生の二人に言うぞ。10月中旬だぞ?わかっているのか?」
それは気が付いていた。受験生が10月中旬まで部活なんて、絶対に不可能であることは分かっていた。
大学進学はしないと言っていた春馬くんはともかく、正直私が10月まで部活を続けるのは厳しいと分かっている。それでも…。
「私は平気です」
「俺は平気です」
二人同時に答えた。
たった一回限りのチャンスだ。今の私が流鏑馬に全てを懸けないと、たぶん一生後悔する。
それに、流鏑馬は私にもう一度弓を引くことを教えてくれたきっかけだ。中途半端に引退なんてできない。
「先生を見ればわかるように、人生は意外と長いんですよ…。くれぐれも後悔しないように。」
おじいちゃん先生に言われると妙な説得力だが、誰になんと言われようと私の考えは変わらない。
「それでも、みなさんがそうと決めたなら先生は応援するのみです。みなさん、頑張ってください。」
三人とも真剣な表情で頷くのであった。
「それで、お前どうするんだよ?」
理科室を出て教室に戻る時、二人きりになると春馬くんは私に尋ねた。
「どうって、出るけど?」
私は前を向いたまま答えた。
「大学はいいのか?」
彼は呟くように尋ねた。
「この辺りの国公立大学目指そうと思ってる。もともとは旧帝受けようかと思ってたから、学部選ばなければ平気かな。」
「東京にはいかないのか?」
私はコクっと頷いた。東京では流鏑馬できないし。
「そっか。」
春馬くんは私の答えを聞くなり、いつものようにニコッとわらった。
「行くからには、三人で表彰台独占しないとな。」
「そうだね。てっぺん取りにいくよ!」
全国高等学校体育連盟 流鏑馬大会まであと2カ月半―。
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