突撃! パツキンギャル汚部屋!

浅草。

年季の入った長屋や日本家屋などが立ち並び、商店街や個人商店が新しくチェーン店が進出した今でも根強く残り続けている街並み。

雷門など有名な伝統的建造物がある一方で、土管の置かれた空き地や家々の間に流れるドブ川などどこか小市民的な郷愁の香りを色濃く感じる場所。


古き良き下町感、日本の伝統とやらが今もなお暮らしの中に残っているのが浅草だ。

人種のサラダボウルと化したトウキョウの中では考えられない程に、昔の日本らしさが残っている。

事実、外国の方を見かけるのは他の地域と比べれば極端に少ない。


どこかのんびりとした時間の流れに、ノスタルジーな雰囲気の街並み。

某国民的アニメの1シーンのように、夕方には茜色の空の下、カラスの鳴き声が聞こえる中でどこかの家の夕餉の匂いが漂ってくるような絵に書いたようなレトロジャパン感が残った街である。

少なくともシンジュクとかと比べると、治安は良い方だ。

……まぁそれは昔気質の人々、背中とかに紋々が入った人達が幅を利かせているからに他ならないので一長一短ではあるのだが。


「コラー!! 待ちなさーい!!!」


魚をくわえたサバトラ柄の猫を、変な髪形の割烹着を着た主婦が追いかけていく。

こういう光景も、この地域じゃなきゃ見れない光景だろう。


「へ~、なんていうか大きなビルとかないのね。シンジュクとは違って……なんか、変な感じ」


「まぁ、ここはそういう地域だからね。昔ながらの日本って感じ」


「ふ~ん」


辺りをキョロキョロと見回すエリカちゃん。

シンジュクとは違った街並みに興味津々といった感じか。


正直、僕としては自分一人ならまだしも、エリカちゃんも一緒だとなると正直ビクビクではある。

日本らしく、日本人が多く見られる地域……新しく純日本人がトウキョウに住むのであれば間違いなく勧められるような地域だ。

それくらい住みやすい。

しかし裏を返せば、外国人にとっては住みにくさのある土地であることに他ならない。


前の豊島に行った時の僕らではないが、外国人っぽい人は少し注目を集めてしまう場所だ。

そして、それを心よく思わない人が居るのである。


……通行人にチラチラ見られているのは、エリカちゃんのレインコートのせいだと思いたいが。

雨でもないのにレインコートを着ているからだってさ。


結局朝ご飯を食べた後に話し合った結果、バスタちゃんグッズということもあって魔法少女服を着せていくわけにもいかなかったのだ。

なので選択したドレスを着てもらうことに。

けれどもあのドレスで外を歩き回るのはやっぱり変に注目を集めてしまう。

それはエリカちゃんも望ましくないよねということで、僕が持っている服でなんとか出来ないか探したんだ。

その結果が、このレインコートである。


ブカブカであっても問題ない……寧ろ身体全体を隠せるのでうってつけだ。

なんとも変にタイミングがあったというか、なんというか……。

僕自身はレインコートを買ったはいいが、結局傘の方が好きだったので使ってなかったのだ。

使い道が見つかって、レインコートも喜んでいることだろう。


晴れているのにレインコートを着ていることで集めてしまう注目と比べても、スパンコールドレス剥き出しで集める視線の方が性欲が含まれている分、前者の方がマシだろう。

……それに、ファッションのことについては今から会う人に聞いた方が女性同士早いだろうしね。


「ここ……だよね?」


目の前にそびえるのは一際寂れた造りの木造アパート。

外壁を葛のようなツル性の植物の蔦が覆いつくしており、軒先には軒先の花壇はあまり管理がなされていないのか枯れた植物の茎が所在なく天に伸びているだけだった。


あからさまなボロアパートだ。

ここに住んでいるんだよな……うん、地図アプリを見てもここで間違いなさそうだ。


「なんかすごいみすぼらしい建物ね」


「まぁ、管理のされていない安アパートはこんなものだと思う……。えーと、部屋番号は203号室っと」


赤茶けた錆の付着した螺旋階段を昇る。

これ……大丈夫か? 崩れたりしない??

一段昇るごとに軋んで、心もとないことこの上ない。


「大丈夫、エリカちゃん?」


「え、ええ……寧ろこの階段の方が大丈夫なの? アタシ、こんな色になってるの初めて見たんだけど……うわっ、手すり掴んだら何かパリパリしてるの手に付いたんだけど! え、アイツこんなところ住んでるの?」


多分、それは錆か剥がれた塗料だろうな。

信じられないと言った様子で戸惑いながらも、エリカちゃんは僕の後をついてくる。

シンジュクの建物でも、ここまで酷いのは見ないだろう。


これは長い時間管理されていない建物特有のみすぼらしさだ。

シンジュクの建物特有の煤の付いたような黒っぽい汚らしさとは違う。

両親が健在の時は当然、シンジュクに居てもあまり見ることはないだろうから、エリカちゃんからすればカルチャーショックに違いない。


それにどうやらパルミラさんはこんな場所に住んでいるようなイメージの人ではないと言うことがエリカちゃんの言葉から分かったしな。

建物と同等の感じの人が出てくるかもと少し身構えたが、杞憂かもしれないな。


階段を昇り切って3つ目のドア。

そのドアの傍、インターホンには203と印字されている。

にしても、かなり昔の型っぽい。

インターホンに詳しくない僕でも、一目見て古さを感じるくらいだからね。


横の窓ガラスは割れたのか、内側からガムテープで目張りされていた。

おぉ……すごいなぁ、これ。


インターホンを押してみる。

……ピンポーンじゃなく、ビー!と鳴った。

うん、なんか古臭いな。


「すみません、メールさせてもらったアンゴですー。セセラさんからお仕事に派遣されまして~」


しばらく待ってると、どたどたどたと足音が聞こえた直後にガチャンと鍵を開ける音が響く。

そして勢いよくドアが開いた。


「は~い! お、キミがアンゴっちか~! よろしくぅ~! お、エリカっちも久しぶりぃ~♪ 相変わらずパイオツカイデ―じゃ~~ん!」


「うげぇ……久しぶり」


「ど、どうも……」


勢いよくドアが開いた先には、一人の女性が立っていた。

まぶしいくらいのブロンドの髪に、眠そうな目つき。

ボンキュッボンといった感じの整ったプロポーション。


休日のギャルと言った様相の少女だ。

前のめりになったことで寝巻であろうダルダルのタンクトップからは紫の下地のヒョウ柄下着と谷間がモロ見えで目に毒なことこの上ない。


「……」


「いだっ!? え、エリカちゃん??」


「……虫が、ついてたから」


「あ、そ、そう? あ、ありがとう……?」


「っ! どういたしましてっっ!! ふんっ!」


 

な、なんだかエリカちゃんの機嫌がいつにも増して悪い気がする。

まぁ、モロセクハラされてたし、さっきは苦虫をかみつぶした顔をしていた。

妙にハイテンションなのも相まって、多分エリカちゃんとは馬の合わないタイプの人なんだなっていうのはなんとなく察しがつくな。


それにしても、虫か……。

近くをドブ川が流れてるし、外壁には蔦が生い茂っている。

羽虫の類が居ても不思議じゃないか。

まったく気づかなかった……ありがたい。

出来れば潰す方向ではなく、教えるくらいで済ませて欲しかったが……。


「あはは、なんかウケるw で、仕事の話だっけ? すり合わせ的なニュアンスでだいじょぶそ?」


「そ、そうです。色々、エリカちゃんと情報を集めてたのでそれを共有したいのと、パルミラさん……ですよね? そちらで集めた情報を共有してもらいたくて。あ、あと僕の挨拶的な意味合いもあります」


「なるほどね~、あ! そうだ、ウチのことは『ぱるる』でいーよー! んでんで、仕事の話だけど~……ちょい今エンジン入らないんよね~。メイクしないとやる気でないかんさ~数分そこで待っててくんね? ちょっぱやでメイク済ませっから!」


「はぁ? なにふざけたこと言ってんのよ。自分が呼びつけたんだからそのくらい準備しときなさいよ!」


手を合わせて頼み込んでくるぱるるさん。

そんなぱるるさんに、結構強めな剣幕で当たるエリカちゃん。

まぁ、でも確かにぶっちゃけそれはそう。

そんなエリカちゃんに、ぱるるさんはヘラヘラと笑いながら両手を合わせた。


「まぁまぁ、昨日色々あったんよ~。悪いようにはせんから~、ね?」


「拒む理由はないので、僕待ちますよ」


「マ? あんがとアンゴっち~! そんじゃメイクバチコリ決めっから後でね~!」


そう言うと、これまた勢いよく扉が閉まるのだった。




化粧を終え、ぱっちりギャルメイクのぱるるさんに部屋に通された。

通された瞬間、僕は息を吞んだよね。


なにせ、物が多すぎる。

玄関近くには通販の段ボールや、ブランド物の紙袋らしきものが平積みになっており、部屋に奥には衣類やらが部屋を散乱していた。

典型的な片付けのできない人間のぶっ散らかりぷりである。

カップ麺の残りなどの食べ物のゴミなどがないのが唯一の救いというべきか。


「……なんか落ち着かないんだけど」


「おろ? エリカっち、人の家とかで緊張しちゃう質? めちゃ意外じゃ~ん! か~わ~い~い~♪」


「違うわよっ!! 部屋が散らかってて落ち着かないって言ってんの!! 部屋に入れる前に少しは片付けたらどう!?」


「え~~~、めんど~~~」


唯一普段使用しているスペースなのか、テーブルの周りはヒョウ柄のカーペットが見えるくらいには整頓されていた。

その周りに腰掛ける。


ソワソワと落ち着かない様子のエリカちゃんに無邪気に小首傾げるぱるるさん。

そんなぱるるさんの態度が気に入らないのか喧々と注意するエリカちゃん。

しかし、ぱるるさんは真面目に受け止めることなくぐでーとテーブルに突っ伏す。

めんど……って、と小声で悪態を吐くエリカちゃん。


どうにもぱるるさんからエリカちゃんへの印象は良いようだが、エリカちゃん側からすればウマが合わないのだろう。

まぁ、だらしのない感じの人柄だ。

エリカちゃん的には見ていられないって感じだろうか。


「やんないといけないって分かってんだよ?でも、マジめんどーでー。あー、誰かやってくんないかな~……。あっそうだ、アンゴっちやってくんない? お礼はウチマジで弾むよ~? おさわりほうだ~い! ほ~れ、ポヨポヨ~♪」


突っ伏していたぱるるさんは顔を上げると、ニヤニヤとした笑みを浮かべながらタンクトップの膨らみ……要するに自分の胸を掴んでポヨポヨと持ち上げ揺らした。

お礼として胸も一緒に弾んでいた。

……まぁ見ちゃうよね、目の前でこんなことされると。


マイナス極に引き寄せられるプラス極並みに僕の目線はその胸へと引き寄せられていた。



「ふ~~~~~~~~ん」


「ハッッッ!!?」


その瞬間、隣からジトッと咎めるような視線を感じた。

見れば、エリカちゃんがジト目で僕を見つめている。


「鼻の下伸ばして、良い御身分ね……仕事の話をしに来たって忘れちゃった?」


「あ、い、いや覚えてるよ」


「ふ~~~ん、なら覚えててそれなんだ。へ~~~~~」


おぉ……こっちに矛先が来た……!

どうにも不機嫌そうなエリカちゃんの視線が注がれる。

確かに、本分を忘れるなと釘を刺されるのは分かる。


けれど、やっぱ揺れる胸を見てしまうのは男の性でして……。

いや、まぁ……これも言い訳だな。


「そだったねー。米倉スズちゃんの行方、色々情報探ってくれたんしょ? ウチも有力なんバンバン集めたかんさ〜! ちょちょいと情報交換と洒落込んで……」


ぱるるさんがそう話を始めようとしたその瞬間、ぐーと間の抜けた音が聞こえる。

ぱるるさんは口を閉じると、お腹をさする。

どうやら、ぱるるさんのお腹の虫が鳴ったらしい。


そして、僕とエリカちゃんを上目遣いで覗き込む。


「あー、ごめん。お腹減ったわ。ふたりともさ、話はどっかご飯屋でしない? お昼ご飯! ウチ、お寿司食べたいかな〜! コスパいい店知ってんだよねー」


「お寿司、ですか? まぁ、確かに時間的にも小腹が空いてくる頃ですけど……」


「新人クンの歓迎会も兼ねてさー、行こうよ〜! 新人クンとエリカっちの分もウチ出すから〜! これでも臨時収入入ったんだよね〜」


「誰がアンタと……でも、お寿司……。しょ、しょうがないわね! あ、アンゴの歓迎会って言うなら? 参加してあげてもいいわよ?」


考え込むエリカちゃん。

お寿司を人のお金で食べれることと、苦手な人と同じ卓に居ることを天秤にかけた結果、お寿司を取ったらしい。

まぁ、僕がエリカちゃんでも寿司取ってた。

わかる、わかるよ……。


僕がエリカちゃんが意地を張らずにする理由になったのなら何よりだ。

そして、当然僕の返事も決まっていた。


「それじゃ、お言葉に甘えて……ありがとうございます」


「いいって、いいって! やっぱ昼から楽しくパーティすんのがいっちゃんアガるし、仲良くなれんじゃん? 中トロ、サーモン、貝、カルビ!!って感じで!!」


僕が頭を下げるとにこやかに応対してくれるぱるるさん。

それにしても、こんなオンボロアパートに居る割には気前が良いものである。

臨時収入が入ったのならタイミングが良かったのだろう。

ラッキーだ。


「ほんじゃ、ウチ着替えっからどっか、別室行っといてアンゴっち? 覗くなよ〜〜〜♪」


楽しげにニマニマと笑うぱるるさん。

揶揄われてる……!


にしても、別室か……。

トイレとか?

そう首を傾げてると、あることを思い出す。


ここに来た理由の一つ。

僕と言うよりはエリカちゃんにとって大事な用を。


「すみません、ぱるるさん」


「ん?」


声を掛けると、既に自分の服に手をかけて脱ごうとしているぱるるさん。

いや、早いだろ。

僕まだ居るんだけど。


「なんかおさがりでも良いので、エリカちゃんに服……何着か見繕ってもらったり出来ないですかね? そのウチに泊めてて服がないのも不便ですし、それに浅草で行動するなら流石に今のスパンコールドレスに雨合羽着せておくのは悪目立ちしかねないじゃないですか? 僕じゃちょっと女の子の服分からなくて……」


「あー、なんでエリカっち雨も降ってないのにカッパ着せてるんだろって思ってたけどなる~♪ 良いよ、お姉さんにおまかせっ! は~、こ~んなカワイイ子のコーデとか腕が鳴りまくりでマジでドラミングかってレベルだわ~w」


「え゛っ゛っ……!?」


僕の申し出をにこやかに笑いながら承諾する。

反面、僕の隣ではエリカちゃんが素っ頓狂な声を上げていた。









「これとかよくね~? エリカっちはブルべベースだから~このカラーリングが似合うし~、つーかさ、アメスク着てウチとおそろにしない? いや、それあり寄りのありっ!!!」


「なんでアタシがアンタに勧められた服……しかもアンタのおさがりを着なきゃいけないのよ……っ!」


ハンガーに掛かった服を両手に持ちながら、パルミラがアタシに笑いかけてくる。

なんでこんなことに……。


それもこれも、アンゴのせいだ。

気を利かせたのか知らないけど、よりにもよって目の前の女に服を頼むなんて……。

いや、男のアンゴが女のパルミラに聞こうと思うのは当然なのかもしれないけど。

それに今の服装だと浮いているってことはここに来るまでに分かっていたことだし、アタシが着る物がないと気にしてくれたのは嬉しいんだけどねっ?


でも……む~~~~。

相手が目の前にいる女じゃなければ……。

パルミラ・ラドヴィッチとは、馬が合わない。

鳳迅一と同じ下品な絡み方してくるし……、やけにいつもテンション高くてついていけない。

話してて疲れる……。

それこそアンゴが言わなかったら、出来ればこうして狭い場所でひとりきりとか勘弁してほしい。

ていうか、部屋汚いんだけど!


「え~? なんでって、彼氏クンが頼んだからでしょ? 良いじゃん良いじゃん、しっかりアピれる服用意したるから!」


「は、はぁっっ!!? 彼氏とかじゃないから!!! なんでそんな話になってるわけぇ!!!?」


「だって~、アンゴっちの部屋に泊ってるっしょ? エリカっちの性格的にもそんなウチみたいに色んな男の部屋にほいほい泊まるとかありえんし? そういうトクベツな仲なのかなって! つーか、ウチがアンゴっち揶揄ったとかなんか怒ってたじゃ~~~ん? カレカノとかじゃないとしても、気になってたりはするっしょ~~~?」


き、ききき、気になってるって!

べ、別にアタシはアンゴのこと、良い奴だなって思ってるだけだし!?

それに別にあの時だって怒ってたわけじゃ……!


「い、色ボケるのもいい加減にしなさい! た、確かにアンゴは優しくしてくれるし、部屋に泊めてくれたり頭撫でてくれる良い奴だけど! 昨日今日出会ったばかりで好きとかどうとかは無理があるっていうか、あくまで仕事で一緒に行動するようになった同僚……とまで言い切るのは冷たいとは思うけど。気の置けない戦友? とにかく仲間ってだけだから! それにあの時だってアタシはアンタが胸を卑しくアピールしたことなんてどうでもよくて、ただアンゴにここに来た本分を疎かにされると困るなって……っ!!!」


「あー、りょーかいりょーかい! 分かったから、落ち着きなって! 早口でめちゃ喋るや~ん!w」


「別に早口なんかじゃ……」


「まぁ、エリカっちが言ってる通りとしても、女の子なんだからカワイイって思われたくね? 別に嫌いな奴ってわけじゃないんしょ? ならエロい、カワイイ、魅力的だって思われたいじゃん? 違う??」


「……」


べ、別にアタシそういうわけじゃ……。

ま、まぁ? アンゴがアタシをそう思うのは勝手だとは思うけど?

昨夜とかバスなんちゃらの服を着ていたときとか、そんな感じだったと思うし?

いろいろやってもらっているわけだから、そのくらいは許容範囲っていうか??


寧ろ好きなように見れば良いじゃないというかなんというか……。

と・に・か・く! ……パルミラが言っていること自体は特に反意はない。


けれど、なんか癪に障るのよね。

まるで言われなくてもわかってると言わんばかりのドヤ顔。

それに……こう、うまくやり込められたような感じがして気に入らないのよね。

普段、あんなちゃらんぽらんに振舞っているのになにまともっぽいこと言ってんのよ……!

うぅぅ~~、言い返せないの腹立つ~~~!


「ふ、ふんっっ!! ……大人の癖にそんな学生の制服着てるような人間に言われたくないわっ!」


「ふ~~~~~~~ん、そういうこと言うんだエリカっち……」


「え、な、なによアンタ……」


ぼそりとぼやくと聞こえていたみたいで、パルミラが手を挙げた状態でこちらににじり寄って来る。

な、なによ……なんか怖いんだけど……。


「決ーめたっ! エリカっちはウチとおそろっち確定ね! メイクまでバチコリ決めて、ゴリゴリのマブいギャルにしてやんよ~っ!」


「は、はぁっ!? 何勝手に決めて……!!」


「そーいうこと言うってことは、ウチのこの恰好の尊さ、キュートさ、ハイカラさが分かってないってことっしょ? だったらその身体に直接教えてやるっつってんの! 分からせたるっつってんのっっ!!」


あ、アタシもしかして地雷踏んだ……!?

ちょっっ、力つよ……!!!


「ちょっ、落ち着いて……! 分かった、言われたくないこと言ったなら謝るからっっ!!」


「問答むよ~~~っっ!! ギャル・イズ・オール!!! アメスク最強!!!! 神妙にお縄につきな~~~~!!!!」


「ちょっ、力つよ……やめっっっ!!!?」







「うい~♪ お待たせ~、どぉ?? めちゃ可愛くね!?」


「……これ、アンタのせいだからね」


ニコニコと笑みを浮かべながら、ほくほく顔で胸を張るぱるるさん。

その隣で、疲れ切った面持ちのエリカちゃんが僕に目線を向けて、むくれていた。


僕が言い出しっぺだからだろうなぁ……。

外からエリカちゃんの喚く声は聞こえていたし。

無理やりお揃いって感じにされたんだろう。

お揃いのギャルって感じのコーディネイトに。


雰囲気はかなり変わってる。

ぱるるさんにメイクもしてもらったのだろう。

前の服も派手でエリカちゃんのような少女が着るには背徳的な感じだった。

しかし、今はぱるるさんの選んだアメスクとメイクも相まってキャピキャピとしたギャル的な可愛さとエロさを感じるような様相を呈していた。

一言で言い表すなら、デカパイアメスクロリギャル。


「メイクだけでも、大分変わるんだね……いやしてない時も可愛かったけど、すると更に派手で……ギャルだなって感じがする」


「そりゃギャルだも~~ん! 当たり前っしょ~~~? ほら、エリカっち~評判良さそうじゃ~~ん? こりゃぁ、今後もぱるるお姉さんがメイク教えたげた方が良い系じゃんね~♪」


「絶対いや、勘弁して……」


ぱるるさんの言葉を聞いて、うんざりと言った様子で肩を落とすエリカちゃん。

その瞬間、胸がたゆんと揺れる。


アメスク特有の丈が短く、下部で結ばれたブラウス。

そのはだけた豊かな胸がふるんと揺れる。

まるでワンポイントのように現れてるピンク色のヒョウ柄ブラジャーへと目が吸い寄せられる。

すっげぇ短いミニスカート、剥き出しのおへそ、胸と上下を視線が行ったり来たり。

正直眼福だ……エッチだと思う。



「……目つきがやらしい、変態……」


「ご、ごめん……! スパンコールに目が慣れたばかりで新鮮だったから……!」


「……ふんっ!」


キッと睨まれたかと思えば、プイッとそっぽ向かれる。

肌もどこか赤いし、怒らせてしまったかもしれない。

そりゃあ、フリーハグやってる時もおっさんに性的に見られて嫌そうだったもんね……。

ほんとごめん……。


「その紙袋にウチから渡せる服は全部入れたから、シンジュク?に帰る時に持っていきな~? つーわけで、さっさとシース―! シースー!!」


「もうこの際、アタシも寿司を堪能してやるわ……っ!」


寿司への強い気持ちを露に、家の外へと出ていくぱるるさん。

そしてそれに続いてぼやきながらもその後をついていくエリカちゃん。

あのコーディネイトの時間はエリカちゃんにとっては、よっぽどストレスがたまったのだろう。


にしても、出来ればこの浅草に馴染む感じの服装にしてほしかったんだが。

いや、アメスクも一応学生服……そして浅草には数少ない東京の普通の学校、私立浅草学園がある土地だ。

アメスクの子も居る……のかな?

とりあえず、この浅草で暮らしている外国人であるところのぱるるさんが選んだんだ。

きっと問題はない、はず……。


そんなことを考えながら、僕も彼女たちに続いて家の外へと出ていくのだった。

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