少年だった頃

@iii-iii-iii

第1話

大学での課題が一区切りつき、煙草を一本吸うためにそとに出た。わたし以外の家族は夏の暑さを耐えるためにクーラーを効かせたリビングで眠っている。課題にもめどが付き、少しだけリビングでジンを飲もうにもそうはいかない。昨日買ったばかりのボンベイは水色の瓶にジンを八割程残してわたしがテーブルに触れるたび揺れ動きわたしを誘惑している。外に出てみると思っていたよりも涼しく、なぜ家族があんな寝方をしているのか疑問を持つばかりであった。鈴虫がの鳴き声が夏の夜をより情緒的なものにしているように感じた。煙草を吸いながらわたしは一体いつまでこの家にいるのだろうなどと考えていると、なぜか小学生のときに家の前で遊んでいた思い出がいくつも浮かび上がってきた。家の前には車が一台通れるほどの道路があり、車通りは多くない。当時のわたしたちは小学生なりに創造力を働かせながらここでよく遊んだものだ。そんな思いに耽っているといつかこの家から離れることが非常に寂しく思えてきて、思い出だけでもここに記しておこうとパソコンを再び開いたのである。

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