第2話 ヴァレリー
ヴァレリーによると、ヴァレリーは昔、ごく普通の人間だったらしい。
『本当だよ、本当だよ』とヴァレリーは泣きそうな声で云ったんだ。もちろん、僕は信じたよ。
「でも……信じられないなあ!」と僕が揶揄うように云うと、ヴァレリーはいきなり宝石を吐いたんだ。眩いそれ。
綺麗だったんだ。その宝石はさ。だから売りにいった。ヴァレリーはしつこいくらいに僕を引き留めたけれど、欲望には勝てなかった。
「金がすべてなんだよ? ヴァレリー。お前も分かるだろ?」
『金……』
「そう。金。お前は犬だから、その感覚は、理解できないかもしれないけど」
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