第7話 公開処刑のステージ 

 日曜午前、学園本校アリーナ。数千人を収容する巨大施設は満員の生徒と観客で埋め尽くされていた。公開ランクバトル――特にAランク体育会連合と、下層上がりのスプロウツの対戦は注目度が桁違いだった。

  控室の空気は重い。

 「正直……勝てる気がしない」哲が弱音を吐いた。

  しかし祥子は毅然とした声で返す。「経験を信じなさい。怖いと言えるのは、もう覚悟がある証拠よ」

  拓馬は拳を握りしめ、仲間を見回した。「俺が必ず切り抜ける。だから、ついてきてくれ」

  寛人が不敵に笑った。「当たり前だろ。短期決戦型はこういう時のためにある」

  栞奈は冷静に端末を操作し、最終確認を告げた。「目標を小さく刻み、順に達成していけば勝機はあります。拓馬さんの再演(リフレイン)も計算に入れました」

  ブザーが鳴り響き、リングへ。体育会連合は全員が恵まれた体格を誇り、圧倒的な威圧感で立ちはだかる。

  試合開始直後から相手の猛攻が襲い掛かる。リングの床が軋み、観客席がどよめく。

 「押し切れ!」体育会のリーダーが号令をかけた。

  寛人が先頭で迎撃するが、パワーに押されて後退する。哲は声を上げた。「だめだ、止まらない!」

  その瞬間、拓馬の視界に蒼光が走る。

 ――再演。

  一秒前の動きが頭の中で巻き戻され、最適解が導かれる。

 「今だ、右に回り込め!」

  拓馬が叫び、寛人が反射的に動いた。リーダーの拳が空を切り、その瞬間に祥子のカウンターが決まる。

  さらに栞奈の指示で布陣を再構築し、友梨のサポートが加わる。体育会連合の攻撃パターンを完全に封じた。

 「押し返せ!」拓馬が前進し、仲間全員が一気に攻勢に転じる。

  リング中央で、拓馬とリーダーが一騎打ちになる。蒼光が再び弾け、拓馬は一秒先の未来を読む。

 「終わりだ!」

  一撃がリーダーを吹き飛ばし、場内に大歓声が巻き起こった。

  実況が叫ぶ。「勝者、スプロウツ!」

  勝利の瞬間、哲は涙をこぼした。「やった……本当に勝てたんだ……」

  祥子が笑みを浮かべ、拓馬の肩を叩く。「よくやったわね。経験が生きたでしょう?」

  拓馬は大きく息をつき、観客席を見上げた。理事長が腕を組み、不気味なほど無表情で彼らを見下ろしていた。

  スプロウツは公開ステージでの勝利を掴み、名実ともに注目の存在となった。

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