第6話 学園祭前哨戦 

 学園祭を一週間後に控えた月曜の朝。レヴェリオ・アカデミーの中庭は異様な熱気に包まれていた。公開ランクバトルの抽選会が行われる日である。勝敗は全校生徒が注目する一大イベントで、スポンサー企業やマスコミまで集まっていた。

  スプロウツのメンバーも、緊張を隠せない様子で会場に足を運んだ。

 「いよいよだな……」拓馬は深呼吸をする。

  寛人は笑いながら肩を叩いた。「お前の再演と俺の瞬発力があれば、どんな相手でも倒せるだろ」

  哲は不安げに端末を握りしめ、「……でも、もしAランクに当たったら……」とつぶやく。

 「当たったら勝つだけだよ」友梨がきっぱりと言い、資料を整理する。

  祥子は笑みを浮かべ、「経験を積むには、強敵の方がいいわ」と応じた。

  やがて抽選が始まった。巨大スクリーンに各チームの組み合わせが映し出され、観客席が歓声を上げる。

  司会者が高らかに告げた。

 「スプロウツの対戦相手は――Aランク体育会連合チーム!」

  会場が一気にざわめいた。体育会連合はパワー系の選手ばかりを集めた猛者集団であり、短時間で試合を決める圧倒的な破壊力を誇る。

  哲は顔を青ざめさせた。「ま、マジかよ……」

  だが栞奈は冷静に手帳を開き、淡々と言う。

 「分析済みです。彼らのパターンは、力任せに押し切る一本調子。対策を立てれば勝機はあります」

  フィオナが前列から声をかけた。留学生である彼女はまだ正式参加していなかったが、独特の柔らかい雰囲気で皆を見守っていた。

 「必要なら私、交渉で時間を稼ぎます。心配しないで」

  そのやり取りを見ていた理事長が、壇上で意味深な笑みを浮かべる。

 (このタイミングで体育会連合を当てるとは……意図的だな)拓馬は心の中でつぶやく。

  その夜、廃部室に集まったスプロウツの面々は、作戦会議を開始した。

 「力任せの相手にどう勝つ?」

  寛人が腕を組み、祥子が経験則で意見を出す。

 「正面からぶつかれば押し負ける。だけど隙は必ずある」

  栞奈は端末に次々とデータを入力し、戦術マップを表示させた。

 「この戦術テンプレートをベースに、再演を絡めて行動パターンを最適化します」

  友梨も資料を抱え、笑った。

 「失敗はもう繰り返さないよ。あの体育会連合に、勝ちに行こう」

  決戦の日は、もう目前に迫っていた。

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