日本で生きる男性の日記

@pand4

無気力と重力

仕事が終わり時計を見ると、時計の針は天辺に向かって歩を進める。

何もなしに眺めているといつのまにか針は頂上に到達した。

明日のことを考え、帰りの支度をして家に帰る。


外に出ると生ぬるい空気が肌に触れる。

昼は灼熱の空気だが、夜は空気も落ち着きを取り戻し、静寂な雰囲気が漂う。

いつもと変わらない街灯がちかちかと点滅している薄暗い道を歩くと、木漏れ日のような光を感じた。

ふと空を見上げると不思議な引力に引き込まれる。


遥か昔の光が私に届き、今を照らす。

そんな臭いことを想いながら、月を見続けていた。

憂鬱な明日を思い出して、歩き始めると、無重力感に襲われた。

丸く夜空を照らす月を見ると吸い込まれていくような錯覚に陥る。

最初は浮遊感に不安と気持ち悪さを覚えたが、次第に楽しくなり、気持ちが高揚してきた。

あぁ、私は自由なのか。


夜はなぜこんなにも怪しく、美しく、自由なのか。

今の高度に満足し、高みを見なくなったのはいつからだろうか。

今の今まで何かが私を縛っていると思い、何かが私を抑えつけていると思い込んでいた。

そんな見えない鎖から抜け出し、目を瞑る。

気づいた頃には随分と高いところまで飛び上がっていたようだ。

ビルの屋上の柵に腰掛け夜の待ちを見下ろす。

まだ自分は登り続けられるのだろうか。

そう思い、また宙に足を出すが思いやめる。

落ちるかもしれない恐怖と今の高さに満足する自分、そんな弱い自分を見ないようにしながら今日も過ごす。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

日本で生きる男性の日記 @pand4

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る