第2話「神の正体を見たり(見てない)」


その夜、自宅に帰った命子は、恐る恐るDMを開いた。

『やっほー!元気?』

「......あなた、誰ですか?」

『だから神だって!全知全能のゴッド!アッラー!ブッダ!......あ、ブッダは違うか』

「ふざけないでください。本当は誰なんですか?」

『えー、マジで神なんだけどなぁ。じゃあ証明しようか?明日の天気は晴れ、気温23度、湿度65%。あと君の上司の部長、明日寝坊して遅刻するよ』

「そんなの天気予報見れば......」

『部長の寝坊は天気予報に載ってないでしょ?あ、ちなみに理由は昨日の飲み過ぎ。今も神保町の居酒屋で5杯目』


翌朝、天気は見事に晴れ。気温も湿度もぴったりだった。そして......

「おはようございます!あれ、部長は?」

「まだ来てないのよ。珍しいわね」先輩が首を傾げた。

9時半、部長が慌てた様子で出社してきた。

「す、すまん!寝坊してしまって......」

命子の背筋が凍った。スマホを見ると、新着メッセージ。

『ほらね?で、信じる?』

「......本物の神様ですか?」

送信した瞬間、我に返った。なんて馬鹿な質問を......

『え。そこで信じちゃう?単純じゃない?』

「はあ!?」

『いやいや、もっと疑えよ。AIかもしれないし、超能力者かもしれないし、未来人かもしれないじゃん』

「じゃあ何なんですか!」

『それは君が考えることでしょ?あ、でも写真なら送れるよ。見たい?』

「......見たいです」

半ば諦めて返信すると、すぐに画像が送られてきた。

ラッパー風の黒人男性が、金のチェーンをじゃらじゃらさせて、サングラスをかけてピースサインをしている写真だった。背景にはなぜか虹がかかっている。

『Yo! Yo! 神in da house! って感じでしょ?』

「......これが神様?」

『そう!これが俺の思考回路を具現化した姿!カッコよくない?』

「意味がわからないんですけど」

『だって神様って言ったら、白髭のおじいさんとか、後光さしてるイメージでしょ?つまんなくない?これからはヒップホップの時代だYo!』

命子は頭を抱えた。この人(?)は本当に神なのか、それともただの変人なのか。

『あ、ちなみに返信めっちゃ早いでしょ?全知全能だから、君が文字打ってる時点で内容わかっちゃうんだよね』

確かに、返信は異常に早い。まるで予測して打っているかのような......

『明日、君に面白いもの教えてあげる。お楽しみに!PEACE OUT!』

『あ、そうそう。明日の朝、電車に乗ると痴漢に間違われるから気をつけて!回避方法は女性専用車両だよ☆』

「なんですかそれ!?」

ラッパーの画像と共に、その日の会話は終わった。

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