第16話
あのチビが出んのかという声が聞こえてきそうで、慣れていることだと周囲の声を遮断する。
どうやら渋っていた俺の到着が最後だったようで、2、3年の列の一番後ろに並べば1年側の1人とバチッと目があった。
うん、まあ出るだろうなとは思ってたけどさ。
「…………はあ!?」
「じゃあもう面倒だから今の並びで対戦。1番前からスタートね」
銀髪の叫び声と、りづさんの声が響いた。
第一戦目がスタートする中、他の出場者は2、3年がステージの右側、1年が左側に分かれて試合を観戦する。
「斗真。お前千里(ちさと)と知り合いか?」
早く終わらないかな、と思っていれば頭にずしっと重さが加わる。
「虎雅(たいが)。重い」
「あいつお前に闘士剥き出しじゃね?」
ウケると笑う虎雅に俺は何もウケない。と虎雅の腕を頭から退ける。
十中八九さっきのが理由だろうなぁ。
闘士剥き出しにされる理由はわかんないけど、俺みたいな地味な奴には負けられないってとこじゃん?
で、当たり前みたいに1年の出場者の中にさっきの金髪もいた。
顔がいい奴は強いって方程式でもあんのか。
「泰雅こそ知り合い?」
「中等部ん時に喧嘩吹っかけられたことあってそっから色々な」
「へぇ。もしかして士郎たちとも知り合い?」
「おー。つかあいつ士郎さん信者だぞ。
あいつと壱流(いちる)…あのハーフのやつな、あいつら今回の一年の中で断トツの代表者候補だから」
「げぇっ」
さいっあくじゃん。
俺完全に舐められてんだけど。
「いいじゃん。お前せっかくトリなんだしド派手にやったれよ」
「いや、それだよ。俺がトリとか正気?」
虎雅代わってくれない?と聞けば、無理。と即答されてガン垂れる。
虎雅が代わってくれるとは思ってなかったけど、そんな即答しなくてもよくない?
ちょっとは考える素振りしようよ。
「お前がトリが1番おもしれぇじゃん。
士郎さんも最初からそのつもりじゃねぇの?」
「昨年度トリだった奴が何言ってんの」
「あん? あれはお前がトリみてぇなもんだろが」
いいとこ持っていきやがってと小突いてくる虎雅に、逆恨みもいいとこだとその手をまた払う。
昨年度トリだった虎雅とは同じ1年として昨年度の親睦会で出場しあった中だ。
ただし、こんなひ弱い野郎と同レベルなんか認めないと何故か対抗心剥き出しの虎雅に挑まれ、先輩とではなく4戦目の予定だった俺とトリだった虎雅の1年同士でやり合った。
結果、俺が勝利。
「お前が勝つとか思わねぇだろ? 普通」
「あの時の虎雅の顔は実物だった」
「お前見かけによらないその性格どうにかしろよ」
「だって虎雅めっちゃ舐めて突っかかってきたじゃん。流石の俺でもムカつくよー」
「ぽっと出の貧弱に見える野郎に負けると思わねぇだろふつー」
「あっはっは。残念だったねー」
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