第13話

ホールは出場しないお気楽な2、3年と興奮気味の1年で溢れかえっていた。


やや遅れ気味で入場した俺たちに1年からの視線が一斉に向けられる。



誰が出場するかまだわかんないし、見定めてるんだろうけど居心地悪いななんて思いつつ、ぐるっとホール内を見渡す。


球技大会などが行われる広いホール内は三階建てでできており、一階がいつも使われてる広いスペースで二階、三階は雛壇の観覧席になっている。



その一階スペースのど真中に普段ならないはずの簡易なステージが出来ていた。


区切られたそこでどうやら試合は行われるらしい。



多くの人間が観覧席にいるってことは、出場者以外は観覧席で見学ってことか。



「見せ物だな…」



去年とほぼ同じ作りに苦笑いを浮かべる。


去年は緊張でこんなに悠長に周りを見る余裕なんてなかったけど、一年前の忘れかけていた記憶を思い出して少し緊張。



なんせ"絶対"勝たないといけない。




「あ、すみません」



プレッシャーだなと息をついていれば、後ろからきた誰かにどんっとぶつかった。


入り口付近で突っ立っていた自分たちが悪いと振り返り際に謝れば、自分より遥かに高い位置に小綺麗な顔があって驚く。



身長は多分士郎たちと同じくらいか?

166センチの自分とは比べもんにならんな、なんて思いつつ、士郎たちに劣らない綺麗な顔に思わず凝視。



金髪…というより寧ろ外国人のような綺麗なブロンドの髪に真っ白な肌。


何より透き通っているかのようなサファイアブルーの瞳に目が引き寄せられる。


ただ、ほんの少しアジア人の顔立ちも混ざっていて、ハーフか?と首を傾げた。


何にしろ、日本人離れした容姿だ。




「おい、てめぇ何止まってんだ…あ?」



見惚れていれば、後ろからこれまた身長の高い男前が登場し一瞬気が遠くなる。


銀色の髪がこんなに似合うやつ見たことないわ。

なんだ? 神様は差別すんのか?



銀色の短髪に白っぽいメッシュがちらほら、切長な目の男前は俺を見て怪訝な表情を浮かべた。



それにしても対照的な容姿の2人だな。




「なんだこのチビ。一般か?」



高い所から見下ろされ、落とされた言葉に笑顔が引き攣る。



「…お前どこに目つけてるんです。赤ラインでしょう」



「はぁ!? てことは2年!?」



俺の制服の胸ポケットを見た金髪男の言葉に信じられないと言うように声を上げる銀髪男。


あ。これ確実に喧嘩売られてますね。



「しかもFの先輩? こいつが?」



おうおう。先輩をこいつ呼ばわりたぁいい度胸だなぁ。



「中坊じゃん」



ぶっ殺すぞ?




マジの顔で俺の顔を覗き込んでくる銀髪野郎と興味なさげに違う方向を見つめる金髪、そして俺らのやり取りを見ていた他の1年からの馬鹿にしたような笑い声に、温厚な俺も流石に目が据わる。



まじで殴ろうかと手が出る寸前にガンッという鈍い音が前方から響き、一斉に全員がそちらに視線を向けた。




「いつまで騒いでやがる幼稚園児共」



ボスが御立腹である。






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