第11話

「あーあ。こりゃ死ぬ気でやらなきゃ怪我するかもよ?」


「俺はいつでも死ぬ気でやってるよ」



俺は特段強いわけじゃない。


筋肉量とか純粋な力試しなら普通に負ける。

腕相撲なんてゲキ弱だ。



この見た目で今回も侮ってくれたらいい。


ムカつくけど、その分油断してくれる。



「てかあれ絶対斗真に向けて言ってたよね?」


「やっぱそうだよな。

あいつほんっと性格わりぃわ」



人の不幸が大好物。

多分俺の不幸はより大好物。



「士郎が出場すればいいのに」



ぽつり、呟いたらはぁ!?と2人から叫び声を頂いた。



「そんな悍ましいこと冗談でも言うなよお前」


「死人が出るよ」



大袈裟な、とも言えないか。


あいつは問答無用で半殺しにする奴だし、歯向かう奴は容赦なく血祭りにあげるやつだ。



知り合って一年。

ほぼ毎日顔を合わす俺だって未だに怖い。



「でもさあ、1年の代表決めるんならそれが一番手っ取り早いのも確かだろ?

士郎に勝てる奴がいるとは思わんけど」



いい勝負するやつがいればそいつが代表で決定だ。

わざわざ5人も試合する意味あるんか。効率悪い。



「絶対見たいだけだろ。試合」



「そりゃあねぇ。

ていうか斗真、一試合だけにしたとしてもしその選抜が斗真だった場合余計に目立つよ?」



由良の言葉に目を点にして固まる。



ごもっともな意見に、なんで気づかなかったんだと、ぽんこつな自分を殴りたくなった。



「あっっぶな」



絶対士郎の前で1人にすればいいじゃんとか言わないでおこう。死ぬわ。



「斗真ってたまーに抜けてるよね」



「たまにじゃなくね? いつもだろ」



「否定したいけど今回ばっかりはできないのが悔しい」





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