🚪「僕たちの怪奇ファイル』第2話 廃村の畑に飛ぶ人魂──地図にない村で見た、あの“光”

@takapapa0716

第2話

まっちゃん、ちいぼう、マメ、そして僕は、いつものようにマメの家に集まっていた。


「ここ、ヤバくない?」そう言ってマメが開いたノートには、印刷された地図と、手書きの矢印。その先には、**“廃村”**と呼ばれている場所があった。


「畑がまだ残っててさ、誰もいないのに、夜になると“青白い火”がフワッと飛ぶらしいよ」


ちいぼうが、口をとがらせて言う。「火ぃ?……それ、人魂じゃん」「え、ほんとに? 出んの?」まっちゃんの声が、急に小さくなった。


「だから、調べに行くんだよ」マメは当然という顔をしていた。


その廃村は、今はほとんど地図にすら載っていない。でも、昔は人が住んでいて、畑も学校もあったらしい。ダム建設の話が出たとき、村ごと移転になったという。


「でもさ、何で畑だけ残ってるんだ?」まっちゃんが言った。「作物とか、もう育ててる人いないんだろ?」


「夜に来ればわかるんじゃない?」マメはニヤリと笑った。


僕は苦笑しながら、そのノートを見た。……なんだろう。ドクン、と胸の奥で何かが鳴った気がした。


翌日、地図にも載っていないというその村の場所を、マメが図書室の郷土資料から調べてきた。


まっちゃんは嫌そうな顔をしてたけど、僕らは3人で、自転車をこいでその村を目指した──



その日の夕方、僕たちは廃村に着いた。舗装が途切れ、草がボウボウに伸びた細道を進んでいくと、やがてそれは現れた。


その村は、町外れの峠を越えた先に、ぽつりと残っていた。


古びた街頭に照らされてポツンと立つ、朽ちかけた家屋。錆びた看板。崩れかけた石垣。


だけど、なぜか畑だけが、ぽつんと一画、手つかずのまま残っていた。


人の気配はないのに、風が通り抜けるたびに、どこかから視線を感じる。



「ここが、その畑……か?」ちいぼうがつぶやく。


草は刈られたばかりのようで、畝の形もきれいだった。そこだけが、ぽっかりと時間から取り残されたように静かだった。


「なあ……おかしくねぇか? 誰も住んでねぇのに、畑だけ手入れされてるとか」


まっちゃんが小声で言った。僕も頷いた。


「このあたり、夜になると青白い火が浮くって噂、ホントにあるらしいぜ」マメは目を輝かせていたけれど、内心はちょっと震えてるのを僕は知ってた。


辺りが完全に暗くなった頃だった。


最初に気づいたのはまっちゃんだった。


「……おい、あれ……」


彼が指さす方を見ると、畑のあぜ道のあたりに、ぼうっと青白い光が浮いていた。まるで火の玉のように、ゆらゆらと揺れて、フワリと宙に浮いている。


「うわ……マジで出た……!」


マメが声を震わせる。


その光は、一定の間隔で左右にゆらゆらと揺れながら、畑の周りを一周しているようだった。


しばらく見ていると、畑の端にある朽ちた建物の前で、その光が止まった。僕は何も言わず、光が止まった方向を見ていた。


懐中電灯…? 


その光は懐中電灯に似ていた。そしてその先には…


懐中電灯を持った**“黒い影”**がいた。そいつが持っている懐中電灯の光は、僕らには向けられていなかった。


畑の中をゆっくり、ゆっくりと歩いている。まるで、何かを探しているみたいに。何度も、同じ場所を。


「やばい……戻ろう……」


ちいぼうが小声で言ったとき、その影がピタリと動きを止めた。


こちらに気づいたかのように──……いや、懐中電灯の光が、ゆっくりこっちに向かってきた。


でも、“顔”が見えなかった。いや、そこに顔が、なかった。


その瞬間だった


風もないのに、周囲の木がざわっと揺れた。


まっちゃんが立ち上がろうとしたとき、僕たちの真後ろから、パキッと枝を踏む音がした。


一瞬、3人とも凍りついた。


振り向いても、そこには何もいなかった。


……でも、誰かが見ていた。いや、“何か”が、ずっとそこにいた気がした。


「やばい……これ以上は……」


「帰ろう」マメのその声が、いつもより低くて、妙に静かだった。



帰り道、僕たちはあまりしゃべらなかった。何を見たのか、確信が持てないまま、でも、怖くてそれを口にできなかった。


マメが、ポツリとつぶやいた。「アレ……イタチとかじゃない?きっとそうだよイタチ…」


マメ…イタチが懐中電灯を持っていたなら、それはそれで怖いよ…


僕は今でも、たまにあの光景を思い出す。


──あの建物の前に浮いていた、奇妙に静かな青白い光を、……             


人魂”なんて、甘い名前で呼ぶべきじゃなかったかもしれない。


あれは──人の形をして、懐中電灯を持った、**“何か”**だった。


あれは、いったいなんだったんだろう。


わからない。でもきっと、まだそこにある気がしてならない。



🎤後書き


“気のせい”ってことにすれば、少しだけ怖くなくなる。でも“確かに見た気がした”記憶は、なかなか消えない。それが真実かどうかは、わからない。ただ──それ以来、あの廃村には、誰も近づかなくなった。



🎯次回予告


【第3話】トンネルに出る100mババア肝試しで訪れたトンネルで、僕たちは“巨大な何か”を見た。それは、ありえないほど大きく、そして早かった──。「走ってくるの、こっちだ!逃げろ!!」思い出すだけで、足がすくむあの夜へ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

🚪「僕たちの怪奇ファイル』第2話 廃村の畑に飛ぶ人魂──地図にない村で見た、あの“光” @takapapa0716

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る