第1章 第7話 「雫影と灰堂②」

【松田 vs 灰堂】


松田は親指を銃に変え、弾幕を浴びせる。

乾いた銃声が機内を震わせ、火花とともに弾丸が灰堂へ迫る。


だが――


キィィンッ! ガン! ガン! ガン!


全弾が、灰堂の大剣の一振りで切り払われていく。

跳弾が座席を抉り、窓にヒビが走った。


「そんな……全部、はじいた!?」

松田の額に冷や汗が流れる。


灰堂は一歩ずつ、まるで獲物を追う獣のように近づく。

「俺の剣術はな、技術だけで命を刈れる。お前みたいな“能力頼みのガキ”には、その恐ろしさはわからねぇだろう。」


松田は歯を食いしばり、刃を構え直す。

「だったら見せてやれよ……“能力と技術の合わせ技”ってやつをな!」


灰堂の目がわずかに細まる。

「強がりか?……遺言か?」


次の瞬間、灰堂の体が霞のように動く。

刃の閃きが松田の背後を襲う――


ズシャアッ!!


鋭い痛みが背を走る。

だが、致命の角度は外れていた。


「背中に入ったはずだぜぇ? なんで避けられた?」

灰堂が目を細める。


松田は膝をつきながらも、かすかに笑った。

「……運、かな。」


灰堂の表情から、わずかに余裕が消えた。


「くそったれぇ!」


刀を力任せに振り下ろす灰堂の姿は、さっきまでの落ち着きがないように見えた。


「…?どうした急に。」


松田は困惑する


「お前は運も実力の内とか思ってんだろ!おれはなぁ…運つっぅのはよぉ…神の贈り物だと思ってんのよ...それが実力だと神に失礼だろうが!」

灰堂は何かがキレたように目の色が変わり剣を振り回す


松田はそれをよけながら灰堂を上回るスピードナイフを灰堂に刺した。


「落ち着きがねえのがよぉ…お前の負けた原因だと思うんだよなぁ…」


松田は冷静に親指を拳銃にして、灰堂の顔に標準を向けた


「このクソガキを止めろおおおォォォ!!!!!雫影ェェエエエエエ!!!」


容赦ない発砲音が鳴り響いた。


【村瀬 vs 雫影】

「やられたか…あのドあほは…」


雫影はやれやれだというように目をつぶる


「とらえられてるのにずいぶん冷静だなこいつ…」


村瀬はここが飛行機だということをいまさら思い出した


「まてよ…今俺はこいつを殺す方法は重力でこの飛行機を落とすしかないのか…?」

冷や汗をかく村瀬

「気づくのが遅いですね…今から君の地面を消します。このスケルトンエナジーなら突き詰めればそれが可能なのです。」

どんどんと透明な部分が村瀬に近づいていく。じめんが削られていくようだった。


「はぁ!?なんですかこの能力チートですか!?」


村瀬は思わず敬語になる。日頃から使っているから標準がこれなのだ。


村瀬はついに重力を出すのをやめ、逃げる


「引っ掛かりましたね!透明にしているだけですよ馬鹿ですか?あなた」


「失礼な!僕は松田家の秘書だ!」

見えなくなったことに村瀬は気づく


「クソッ!やられた!」

村瀬はあたりを焦って見回す

「きたぞっ!村瀬!」

松田がここで合流


「厄介ですね…」

村瀬は声がしたあたりの重力を強くする。

松田はそのあたりを銃で撃ちまくる。


雫影が霧のように消え、灰堂の大剣が床に転がる。

機内を包んでいた不気味な静寂が、ようやく解けていった。


「……終わったのか?」

村瀬が肩で息をしながら呟く。


透夜は頷き、刃に変えていた親指を元に戻す。

「二人とも厄介だったが……もう二度と立ち上がれねぇだろ。」


そのとき、機体のアナウンスが流れる。

『まもなく着陸します。皆さま、シートベルトを――』


いつの間にか、乗客たちも正気を取り戻し、眠っていたように目を擦っていた。

「夢でも見てたみたいだ……」と誰かが呟く。


透夜と村瀬は無言のまま目を合わせる。

(奴らが仕組んだ“精神操作”の影響だったのか……)


――ゴォォォン……!


飛行機が滑走路に接地し、衝撃が全身に伝わった。

窓の外には、夕陽に照らされた空港の街並みが広がっていた。


「着いたな……」

透夜が呟き、拳を握る。


烈の影を追う旅路は、まだ始まったばかりだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る