第四章:再び迫る影

藁の家を吹き飛ばし、ポルを探していたオオカミでしたが、

辺りをうろつきながらブツブツと文句を言っていました。


「ったく、腹減って長くは走れねぇ……」


しばらく歩き回っていたオオカミは、ふと足を止めてつぶやきました。

「そうだ。あの川沿いのブタ……もう戻ってきてるんじゃないか?」


にやりと口元を歪め、オオカミは再びレンのもとへと向かっていきました。



鳥の声が止み、木々のざわめきさえ聞こえなくなり、

森の空気が、ふと凍りついたように静まり返りました。


レンはレンガの壁に積もうとしていた手を止め、顔を上げました。

「……まただ」

冷たい風が一瞬、頬をなでます。鼻をくすぐる、あの獣臭。


「オオカミが、戻ってきた……!」

レンは再び道具を放り出し、ポルの藁の家を目指して駆け出しました。



「ポル兄さん! またオオカミが……!」


叫びながら駆けつけた藁の家は――もう、どこにもありませんでした。



散らばる藁、深くえぐれた足跡。

そして、その中心に残る、獣の爪痕。


「まさか……」


レンはすぐさま踵を返し、次はモクの家を目指しました。



ようやく見えた木の家に向かい、レンは叫びました。

「モク兄さん! 僕だ、レンだ!」

「レン!? どうしたんだ?」

モクとポルの顔がのぞきました。


「よかった……藁の家、なくなってたから……」

レンは元気なポルの顔を見て、やっと安堵の息をつきました。


「ああ、俺の家、オオカミに吹き飛ばされたんだ。

 それより、レン、

 お前……オオカミに会わなかったのか?」

「うん。僕の家にまた来た。

 でも、気配で分かったから、なんとか逃げてきたんだ」


モクが静かに言います。

「みんな無事でよかったよ」

 僕の木の家なら、きっと大丈夫さ。

 少しの間、みんなで一緒にいよう」




木の枝の壁が風に揺れ、ひゅうひゅうと不気味な音を立てていました。


まるで、嵐の前の静けさのように――。




続く~第五章へ~



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る