託されるダガー

@MANARN

第一章

日常の崩壊

ここはアルマリア王国辺境にある『ヨグ』の町

製鉄業が盛んな町で小規模だが農業も行われており、中規模程度の討伐隊がある

討伐隊とは町を守る、依頼があればモンスターの討伐を行う組織で王国の管理下でもある

ヨグの町周辺ではモンスターがあまり居なく規模はさほど大きくはない


彼女『ヴァネッサ』はこの町の住民の1人だった

年齢は8歳で小学3年生、製鉄工場で働く父のゴランと専業主婦の母のリーサと共に不自由なく暮らしている


ある日、学校から帰宅したヴァネッサは

ヴ『お母さんただいま!』

リ『おかえりヴァネッサ』

ヴ『ねえ見て見て、共通言語のテストで100点取ったの!』

3年生では共通言語、算数、魔法のしくみ、現代社会の4科目がある

リ『苦手教科で100点なんて凄いじゃない、頑張ったのね』


ヴァネッサには目標があった

『いい学校に入って偉い人になる』という子供らしい漠然とした目標ではあるが両親に誉めてもらいたい一心で努力している


リ『ねえヴァネッサ、500Gで適当に野菜買って来てくれる?』

ヴ『なんでもいいの?』

リ『なんでもいいよ、買ってきた野菜をみて献立を決めるから』

ヴ『わかった、行ってくるね!』

そう言って勢いよく家を飛び出す

リ『気をつけるのよー』


市場にて

ヴ『(何を買おうかなーそういえば保管庫にひき肉が冷凍されてたっけ?じゃあ人参と玉ねぎにしよう、そしたらハンバーグ作ってくれるかも)』

リースはこうしてヴァネッサに献立を決めてもらうためたまにおつかいを頼んでいる

ヴ『レイラおばさん、人参と玉ねぎある?』

レ『あらヴァネッサ今日も家のお手伝いなんて関心ね、ウチのフィールなんて学校から帰ってすぐ遊びに行ったのに』

ヴ『フィールは遊ぶのが大好きだもんね』

フィールはヴァネッサのひとつ下の男の子だ

レ『あの子も少しは勉強してくれればいいんだけど』

ヴ『フィールは勉強嫌いだからね、はいおばさん人参2本と玉ねぎ3個で428Gだよ』

レ『計算までしてくれたのかい、すまないねぇ』

ヴ『じゃあ帰るね、早くハンバーグ作ってもらうんだ!』

そして元気よく走り出す

レ『転ばないように気をつけなよー』


ヴ『ただいま』

リ『おかえり、どれどれ何を買って来たのかな?

ヴ『人参と玉ねぎだよ』

リ『じゃあハンバーグ作らないとね』

ヴ『ヤッター!』

リ『じゃあヴァネッサ、手伝ってくれる?』

ヴ『うん』


しばらくして父のゴランが帰宅した

ゴ『ただいま』

ヴ『おかえりお父さん、見て見て共通言語のテストで100点とったの!』

ゴ『おっ、すごいじゃないか流石ヴァネッサだ』

ヴ『えへへ、晩御飯もうすぐ出来るからちょっと待っててね今日はハンバーグだよ』


ご飯を食べてからしばらくして外が騒がしくなった

ゴ『なんだか外が騒がしいな何かあったのか?』

そう言ってドアに手を伸ばした時悲鳴が上がった

リ『!?何?』

ゴランは剣を持ち外へ飛び出して行った

ゴ『リーサ、ヴァネッサを頼んだぞ』

ヴ『お母さん何が起こってるの…』

リ『大丈夫、大丈夫だから』

そう言ってヴァネッサを抱きしめる

数分してゴランが戻ってくる

ゴ『リーサ、ヴァネッサ逃げるぞ!』

リ『何があったの?』

ゴ『突然おびただしい数のモンスターが現れたそうなんだ、討伐隊が応戦しているがあの数じゃいつまでもつか分からん、モンスター共は北側から攻めて来ているから町の南口から逃げよう』

リ『わかった、ヴァネッサ母さんの手を離さないでね』

ヴ『う、うん』

リーサはダガーを2本取り3人で家を飛び出す


町の南口周辺

町の人々はそこから避難しようとしており入り口が狭いせいで渋滞している

ゴ『このままだと外に出るためには十数分はかかりそうだな』

ヴ『お母さん怖いよ…』

リ『大丈夫よヴァネッサ、父さんと母さんが護ってあげるからね』

そういうリーサの声は震えていた

レ『リーサ!』

リ『レイラ!フィール君!』

レ『何が起こってるの?』

リ『分からない』

フ『ヴァネッサ、怖いよ』

フィールは泣きじゃくっている

ヴ『私も怖いけど泣いちゃダメ、きっと大丈夫だから』

すると後ろの方から

『オークが来たぞ!』

『おい早く前に進め!』

『なんて数だ!』

群衆はパニックになり前に詰めようとする

リ『ヴァネッサ、母さんの腕を離さないで!』

ヴ『うん!』

ゴ『南口はダメだ一旦南東の出口に行くぞ、レイラも来るんだ』

レ『わかった』

父の提案でヴァネッサ達5人は集団からなんとか逃れて南東を目指す

後ろで金属音がする

みんなが戦っているのだろう

そして何人かは同じ考えなのか南東を目指して走っている


そして目的地に着いた

南口の出口に比べて小規模だがそのせいかさほど人は集まっていない、数分もすれば外に出られそうだ

列の後ろに到着したその時、東側からゴブリンの集団が押し寄せて来た

明らかに100体は超えている

ゴランを含め5人がほぼ同時に剣を抜いた

ゴ『リーサ、ヴァネッサを護れ!』

リ『ヴァネッサ、母さんの後ろに!』

そう言いリーサもダガーを抜いた

横ではレイラも剣を構えている

ヴァネッサはフィールの手を握った

ヴ『フィールこっちに!』

そう言い出口に向かう人々と避難しようとする

ゴラン達5人はゴブリンと交戦状態に入るが別方向からウェアウルフ12体が襲ってくる

ゴ『(この数のゴブリンを相手にウェアウルフ10体程…このままでは…っ)』

ゴランはリーサの隣まで下がり

ゴ『リーサ、ここは俺たちに任せてヴァネッサと逃げろ』

リ『ゴラン!何言ってるの!』

ゴ『分かるだろ!どう考えても抑えきれん…避難までの時間稼ぎに徹するから逃げるんだ!』

リーサは異議を唱えようとするが冷静になり同意した

リ『絶対に死なないでよ! レイラ、あなたも一緒に!』

そう言いヴァネッサの手を取り出口に押し寄せている人が出るのを待った

そしてヴァネッサ達が外へ出た時にリーサは後ろからゴランの断末魔の叫びを聞いた

ゴランの元に戻りたい気持ちを必死に抑え皆と避難するのであった

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