リアルだと着られないコーディネートや、部屋に置けないインテリアはありませんか? 自分好みのアイテムを選んで着せ替えや模様替えができる空間は、まさに夢のような場所ですよね。本作の主人公・日和も『バーチャル・ドール』にログインして、アバターや部屋を可愛く飾っていました。
『バーチャル・ドール』でできることは、好きなアイテムをカスタマイズするだけではありません。アプリ内で出会った友達と、アバター越しに交流することも可能なのです。
日和がアプリで仲良くなった友達・れもんとのやりとりは、実際に日和が操作している画面を見ているようで、微笑ましく感じました。
新入生代表挨拶を引き受けるべきか悩む日和に、背中を押してくれたれもん。
ドキドキしながら迎えた本番で日和を助けてくれた同級生との交流がきっかけで、日和のリアルは少しずつキラキラしたものになっていって――
日和たちのような思春期まっさかりの中学生のときは、前まで好きだったものも成長していったら卒業しないといけないのではないかと思うことも出てくるでしょう。
いつまでも好きなままでいる自分はだめ? 好きでい続けるなら隠していた方がいい?
いいえ、そのようなことはありません! 不安を持っている方も、本作を通じて好きを楽しむ勇気をもらえるはずです!
大きくなっても、どんな人でも、好きなものを全力で楽しんでいい。
温かくて優しい世界がもっと広がれと思いながら、好きなものに夢中になれる幸せを改めて噛みしめたくなった作品です。
登場人物を見つめるまなざしが温かく、子供たちの成長や、仲間たちと絆で結ばれていく過程がとても丁寧に描かれた良作でした。
思春期の子供たちにとって、自分の好きなものを打ち明けるのは、案外勇気がいるものなのかもしれません。
まして、そのせいでからかわれたりすれば、臆病になるというもの。
しかし、「ありのまま」の自分を認め、勇気を出して周りに打ち明けた時、暗くふさがりがちだった世界に新たな光が差しこんできます。
また、受け入れてくれる仲間たちが現れ、青春や、命そのものまでがいっそう輝きを放ちます。
「多様性」が叫ばれる現代にぴったりの作品だと思いました。
中学校に入学して、新入生代表挨拶をすることになった主人公の日和ちゃん。
しかしガチガチに緊張して上手く喋れずに困っていると、助けてくれたのは同じクラスの男の子、雪村くんでした。
実は雪村くんは、ネットで仲良くなっていた友達。
そんな雪村くんはかわいいものや女子向けアニメが好きなのですが、過去に男子がそんなの好きなんて変だとバカにされたせいで、好きなことを周りに隠していました。
けど、男子がかわいいものが好きでもいいですよね。
何が好きでも、おかしいなんて事はありません。日和ちゃんもちゃんとそれを分かっていて、意気投合した二人はかわいいもの好きのグループ、カワラブ同盟を結成!
かわいいものの写真や情報を、次々とSNSに投稿していきます。
好きなものについて、誰かと語るのって楽しいですよね。
過去に辛い経験をした雪村くんですが、理解者である日和ちゃんと出会って、楽しい中学校生活を送れること間違いなし。
一緒に写真を撮ったり、アニメキャラのダンスを踊ったりしながら仲良くなっていく日和ちゃんと雪村くん、読んでてとてもほのぼのしました。
好きなもの、好きなことをを楽しみたい人に、勇気と元気を与えてくれるお話です。
男の子が可愛いものを好きなんて変。このアニメは子供向けだから、大きくなったら卒業ね。
そんな言葉を聞いたことはないでしょうか?
あるという人は、疑問に思いませんでしたか? 好きなものに、性別や年齢って関係あるのかな。好きなものを好きでい続けるのって、そんなにおかしいことなのかなと。
おかしくありません!
好きなものは好き、それでいいのです。
そうはっきり言ってくれるのが、本作の主人公の日和ちゃん。
彼女はとある魔法少女アニメが好きで中学生になった今でも見ていてるのですが、同じ学校に通う雪村くんもそのアニメが大好き。だけど雪村くんは、中学生にもなって、それも、男子が魔法少女のファンって変なのではと、好きだというのを誰にも言えないでいたのです。
というのも、実際に変だと言われ、嫌な絡まれ方をされたことがあったから。
ですが、それを聞いて放っておけないのが日和ちゃん。好きな気持ちを自由に吐き出せる場所があればと思って考えたのが、『カワラブ同盟』。可愛いものを見つけたらSNSにアップして盛り上がるというこの同盟。これなら、性別も年齢も関係なく楽しむことができるはず。
自分も男ですが可愛いものは好きですし、大人になった今でもアニメは見ますし児童書だって読みます。だって、好きだから。
誰かに迷惑をかけるのでなければ、何を好きだっていいですし、大いに楽しんだっていい。そんな思いを肯定されたような気持ちになりました。
好きなものを好きと言える楽しさ、本作を読んで大いに味わいましょう。