背中に翼を右手でバイクを
背中に翼が生えた二人の男女がバイクを走らせている。田畑しかない舗装されていない道を、四〇〇のバイクはご機嫌に走り去っていく。
「ネー、背中にサ、羽根が生えてるのにサ、バイクって面白いネ」
「ハハ。それぐれーがたのしーンじゃねーか? 訳わかんねーことしてる時が一番たのしーじゃねーかヨ」
男はヘルメットを脱ぎ捨て、さらにバイクを加速させる。
「マッポもいねーヨこんなとこ! オマエもメットなんか捨てちまえ!」
「わかったヨ! アハハ! こんな日が続けばいいのに!」
二人の楽しげな笑い声は山にこだまし返ってくる。それくらいに大きな声で笑い、今を楽しんだ。男は大声で聞いた。
「次はどこいく?」
「アンタがいきたい場所でいいヨ」
「じゃあキタだな。こーいうのはキタって相場が決まってんだ」
男はアクセルを捻る手の感覚が鈍化していることに気づく。「もうながくねーのかよ」と小さく呟き、バイクを走らせる。
数ヶ月後、蔦と雑草に侵食されたバイクの上に二枚の煌めいた羽根があったという。
翼病 中川葉子 @tyusensiva
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