第17話の2 誇れる守護者

 ふんふん、何かいい匂いがする。ぼくの好きな匂いだ。

 ぼくは目をあけた。

「マーロウ! よかった! 起きたわ!」

 よく聞きなれた声がした。

「もう大丈夫だよ。私たちがいるからね」

 家族の声だ。


 ぼくはふかふかのベッドに寝かされていた。

 うーんとのびをすると足が何かに触れた。

 妹だ。

 ぼくの妹だ。

 ぼくの横ですやすやと寝ている。

 けがもない。

 よかった、きっとあの人が助けてくれたんだ。


「悪かったね。私たちがもっと気を付けていれば」

「ジョディったら、初めてのおでかけで楽しくなってしまったのね」

「ほう、そうだったんですか」

 あの人の声がする。ぼくを助けてくれた人の声。


「ジョディは馬車が止まるや否や、ドアを開けて飛び出してしまったのです」

「私たちは窓の外を見ていたり、降りようとドレスの裾をさばいていたから気づくのが遅れて」

「マーロウだけがサッと追いかけていったようです」

「それはご災難でしたね」

 家族の手がぼくと妹の頭をなでてくる。

 あったかい。


「ジョディをさらったのは、貴族相手に家族を誘拐して身代金を要求している連中だとお聞きしました」

「ええ、私が駆け付けた時には縛られたジョディちゃんが馬車に乗せられ、連れ去られようとしているところでした」


「まさか自分たちの身に起きるとは」

「危ないところを助けていただいて」

「私はただ、ならず者たちを捕まえただけですから。マーロウ君のお手柄ですよ」

 みんながこっちを向いた。

 ぼくはちょっと得意になってにこって笑ってみせた。


「では私はこれで」

「いえ、まだお礼もろくに」

「そんなそんな、十分感謝の言葉とおいしいお茶に菓子をいただきましたので十分ですよ」

「それでは私たちの気が…」

「あ、じゃあこれから二日後にこの先の広場で私共、ショーを開きますのでよかったらご一家で。もちろんジョディちゃん、マーロウ君もご一緒に。特別な席をご用意します」


「そんなことでいいのですか」

「そんなことでいいんです」

「全員って…ご迷惑では」

「みんな大切なご家族ですよね」

「ええ。マーロウはジョディが生まれた時からぴったりと寄り添って」

「まるで自分が兄だといわんばかりに守ってくれていたんです」

 そうだよ。ジョディはぼくの大事な妹だよ。


 あの人がドアをあけて出ていく気配がする。


 ぼくは急いでベッドから降りて、その人のところに走っていった。

「わん!」

「おや、マーロウ君、声も出るようになりましたね。よかったです」

 感謝の気持ちをこめてぼくは頭をこすりつけた。

(ありがとう! 妹を助けてくれて!)


「礼には及びませんよ。でも、今後は人間に任せるんですよ」

(うん!)

「言葉が、わかるのですか?」

「ああ、いえ。なんとなくお礼を言っているのかなと思っただけです。それでは失礼」

 ドアがばたんと閉じた。

 またね! 親切な人。

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