「ファンタジー」を目一杯愛した作品

昔ながらのファンタジーが好きな主人公が、期待していた異世界との齟齬に不満を感じながら、所謂"テンプレ"…既定路線を歩んでいくストーリーとなっています。


主人公である将太はリスペクトもクソもない世界観に内心ずっと不満たらたらですが、そんな将太が繰り出すツッコミは小気味よく、思わず笑ってしまいます。


主人公の独白ではファンタジーの知識からくる"不満点"が語られており、作中だけでなく私たちの生きる現代の"テンプレ作品"に蔓延る「それっておかしいだろ！」について気づかされます。


主人公のファンタジーに対する造形が深いため、彼の詳細な独白を読み込もうとすると苦になってしまう…
かと思いきやそんなこともなく、キャッチーな物語と主人公が感じた違和感に対するアンサーとしての"気づき"という対比構成が知識欲を促進し、単体だったら冗長にも思えてしまいそうな解説文を読むのが寧ろとても楽しいです。


そして、ガバガバ設定故にどこか現実味の薄いシステムじみた世界ですが、キャラクターたちの"軽さ"がいい意味で作品に明るさをもたらしており、だんだんと愛着が湧いてきます。


現代のテンプレファンタジーと昔ながらのファンタジー双方について理解のある作品となっていて、後者に関して疎い私ですが、楽しみながらちょっとした勉強にもなるこの作品はぴったりでした。


私は現時点では序盤までしか読んでいないのですが、これだけ早い段階でもレビューを書いてしまいたくなるほどに引き込まれる、魅力的な作品となっています。


早く続きが読みたくて待ちきれません！