呪われてそうな場所

尾八原ジュージ

呪われてそうな場所

 人を呪うことにした。

 一人だと怖いので、友だちと一緒に呪うことにした。各々別のターゲットを呪うのだ。私はわりとノリだけど、友だちには結構シリアスな事情があるらしい。

 道具を揃え、手順を確認し、あとは決行するだけとなったところで、

「どこでやる?」

 と、友だちが言った。

「どうせやるなら、効きそうなところがいいんじゃない?」

「効きそうなところって?」

「なんていうか、呪われてそうなとこっしょ」

 なるほどね、と思ったので、「呪われてそうなとこ」を探すことにした。

「うちめっちゃ汚いから」

 と友だちが言うので、私の部屋で地図を広げた。

 案外難しい。不審な事故が相次いでいるショッピングセンターは? 自殺者の多い踏切は? どちらも人通りが多いから、絶対誰かに見られてしまう。なら、殺人事件があった廃屋は? がっつり封鎖されてて入れない。自殺の名所の森は? 自分たちが出てこられなくなりそう。

 困った友だちは「占い師に聞いてくる」と言って、出かけていった。

 私はダウジングをしてみることにした。錘をつけた紐を指から垂らし、地図の上を彷徨ってみる。呪われてそうな場所、呪われてそうな場所、呪われてそうで、かつ藁人形に五寸釘を打ち込んでてもばれなくて、かつそもそも侵入可能で、かつ無事に帰ってこられそうな場所をお願いします――と念じていると、一カ所、やけに錘が揺れる場所がある。

 友だちに知らせなければ、と立ち上がった瞬間、当の彼女が戻ってきた。

「ねぇ! 占い師酷いんだけど!」

「ねぇ! ここ呪われてそう!」

 私は地図の一点、錘が狂ったように揺れているところを指差す。友だちは地図を見て、私を見て、それからゲラゲラ笑い出す。

「あははは! 酷! ひっど! ここ私んちじゃん! うちじゃん! 確かにね!? 呪われてそうかもね! 確かに!!」

 ゲラゲラ笑いながら友だちはもう一度部屋を飛び出していき、今度は戻ってこなかった。

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