第4話 「本格的な温泉」

「帰ったぞー」

「おかえりなさい、あなた」

「あー、お腹空いた...もう食事の支度は出来てるよな?」

「ごめんなさい、まだなの」

「お風呂の準備は出来てるから、先に入っちゃって」

「嗚呼、判った。先に入るよ」

.・゜゜・ ・゜゜・..・゜゜・ ・゜゜・.

「おぉ!この匂いは...!」

「温泉の匂いだ!」

温泉好きな俺のために、妻が入浴剤を用意してくれたようだった。

「こりゃ最高だな、疲れも吹っ飛びそうだ」

.・゜゜・ ・゜゜・..・゜゜・ ・゜゜・.

「良い湯だな...体の芯から温まる」

「こんなに本格的な入浴剤ってあるんだな」

「後でお礼を言わないと」

しばらく温泉気分を楽しんだ後、体を洗うために湯船から出た。

ジャーッ

ボディーソープを手に取ろうとした時。

「あれ、なんか変だな」

手がヒリヒリするような感覚があった。

そして。なんだか嗅ぎ覚えのあるようなにおいがした。

その瞬間、学生時代にトイレ掃除の当番だったときの事と

同時に、友人と有名な温泉に行った時の事がよぎった。

におい、手の感覚、バスルームの空気...

何か異様なものを感じた。

「だめだ...頭が、くらくら...」

「う、動けない...」

「助けてくれ......」

.・゜゜・ ・゜゜・. .・゜゜・ ・゜゜・.

スタッスタッスタッ

「......ふふっ」

.・゜゜・ ・゜゜・..・゜゜・ ・゜゜・.











〚 解説 〛

主人公がお風呂に入ると、本格的な温泉の匂いが。

妻が入浴剤を入れてくれたのだと、のんびり堪能します。

しかし、湯船から出ると体の痺れや頭のモヤモヤなど、至る所に不調が出始めます

意識を失う直前、主人公がおかしなにおいに気づきます。それで思い出したのは、「トイレ掃除の記憶」と「有名な温泉に行った時の記憶」

そして最後、倒れている主人公を見て慌てるどころか笑っている妻、明らかにおかしいですよね

妻は、温泉風の入浴剤とトイレ掃除で使われる「混ぜるな危険」と書かれた洗剤を混ぜて湯船に入れ

温泉の匂いだと思い込んだ主人公は、のんびり入って居る間にどんどん吸い込み、命を削ってしまった訳です。

主人公の好きなものを利用するなんて、恐ろしいやり方ですね...

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