第10話 妹まで
「ここまでで大丈夫かな? 」
俺はサッカー部のグラウンド前までドリンクの詰まったカゴを運び、隣を進む美少女に尋ねる。
「は、はい。ありがとうございました。これ、受け取ります! 」
美少女は律儀に頭を下げ、カゴを俺から受け取る。
「いやいや。大したことないよ」
俺は首を左右に振る。
「そんな。謙遜なんかしなくても」
美少女も首を左右に振る。
「お、おい! 穏! 」
西田が俺と美少女の世界に割って入るように登場する。
「お兄ちゃん。こんなに早く練習に顔を出すなんて珍しいね」
衝撃的な言葉が美少女から発せられる。どうやら目の前の美少女は、あの西田の妹らしい。
「ああ。今日はな。…そんなのはいいんだよね。なんで穏が、馬場みたいな奴と一緒に居るんだよ! 」
西田は焦った顔に強い口調で妹の穏に尋ねる。
「むっ。お兄ちゃん、私を助けてくれた人を、みたいな奴なんて言わないでくれる? 」
西田の妹は怒って頬を膨らませ、兄を細目で凝視する。
「うっ。す、すまん」
あのクズな西田も妹には弱いのだろう。妹の注意に対して素直に謝罪する。
「馬場先輩っていうんですね。西田穏です。先ほどは兄が失礼いたしました」
西田の妹はペコリッと頭を下げる。
「いやいや。君が頭を下げる必要はないよ。じゃあ、用は済んだし。俺はこれで」
俺はヒラヒラと手を振ってから踵を返す。
少しでもかっこよく去りたい自分が居た。その欲望に従う。
「はい! 今日はありがとうございました! 」
西田の妹は大きく右腕を俺の背中に振り続ける。その表情は満面の笑みであった。
彼女の視界に全く兄の姿は映っていなかった。
そんな光景を直で認識した西田。何とか妹の気を引こうと声を掛けるが、彼女には残念ながら届かない。
その反応に打ちのめされ、目を曇らせる西田であった。
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