泡になった夏

@AS61

短編

ポーンと

栓抜きで瓶の炭酸を解放させる。

シュワっとした黒い砂糖水は

喉を駆け巡り

心を満たす。

「ねぇ、瓶のコーラって重いし、栓抜きないと飲めないじゃん」

彼はニコッと笑い

「炭酸の量が違うのさ」

と冗談ぽく言い放つ。

そんなはずないじゃんと喉の奥に

込み上げた言葉をそっと閉じこめた

瓶のコーラの味は思い出が

そっと美味しくしているに違いない。


テーブルの上の瓶のコーラは、

うっすらと汗をかいていた。

それはまるで、

歓喜の涙が冷や汗になって滲み出したようだった。

嬉しそうに、そこにいた。

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