嵐の日

台風が迫りつつある蒸した夜

無風の湿気にくるまれた

草の中で虫が鳴いている

垂れた稲穂も

やがて荒れるものになぎ倒されるはず


言葉にならないこころの痛みを、

隣で寝息をたてている人に伝えられない

狂おしく、闇に閉ざされた空気のなかで

胸が悲鳴を上げる


呼吸を求めて窓を開け放ち

風にあおられている空に向かえば

応えるように気配がふるえる


夜のうちに走り抜ける大気のうねり

激しく衝撃を受ける建物の暗さに

敏く身を震わせながら朝を待つのも


夜空に灰色が幾重にも重なる雲や

大きくしなっては跳ね返る木々

堤防からしぶきを上げる濁流が光るのも


名前の付けようもない己の烈しさのようだ

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