第13話「エモ・オーバーロード・クライシス!」

# 『願いペット★ミラクルハント』第13話


## 第13話「エモ・オーバーロード・クライシス!」


理科室に設置された巨大な機械が、不気味な音を立てていた。


「これがナイトメア団の新兵器...」


ハーゼルの顔が青ざめている。


画面には『エモーション・アンプリファイア』の文字。


感情増幅装置。


「一度に12種類全ての感情を強制的に引き出すなんて...」


レイが震え声で言った。


私たちが知っている感情は6種類。でも本当は――


突然、機械が激しく振動した。


ビビビビビ!!


頭に電撃が走るような衝撃。


願いブックが暴走し始めた。


画面に、次々と新しいゲージが出現する。


```

【拡張感情ステータス】

希望 ■■■■■■■□□□ (7/10)

勇気 ■■■■■□□□□□ (5/10)

愛情 ■■■■■■□□□□ (6/10)

不安 ■■■■■■■■□□ (8/10)

怒り ■■■■□□□□□□ (4/10)

信頼 ■■■■■■■□□□ (7/10)


【新規感情覚醒】

嫉妬 ■■■■■■■■■□ (9/10) 緑

孤独 ■■■■■■■□□□ (7/10) 灰

歓喜 ■■■■■□□□□□ (5/10) 黄

絶望 ■■■■■■■■■■ (10/10) 黒

後悔 ■■■■■■□□□□ (6/10) 茶

執着 ■■■■■■■■□□ (8/10) 紫

```


「12種類も...こんなの制御できない!」


タケルが苦しそうに頭を抱えた。


全員の願いペットが、制御不能になり始めた。


ユイのブレイブラビットは勇気と恐怖で震え、タケルのファイヤードラゴンは怒りと歓喜で炎を吹き散らす。


「みんな、落ち着いて!」


でも私自身も、頭の中がぐちゃぐちゃだった。


希望と絶望が同時に湧き上がり、愛情と嫉妬がせめぎ合う。


フェニックス・ミラージュの姿が、めまぐるしく変化していく。


虹色から漆黒へ、そしてまた虹色へ。


「このままじゃ...みんな壊れちゃう!」


パニックの中、ふと気づいた。


12種類の感情が、まるでオーケストラのように響いている。


バラバラだけど、どこかでつながっている。


「そうか...」


私は願いブックを高く掲げた。


「感情は敵じゃない。全部、私たちの一部なんだ」


深呼吸して、心を落ち着ける。


まずは自分の感情を、一つずつ受け入れよう。


「希望があるから、絶望も知る」


希望ゲージと絶望ゲージが共鳴し始めた。


「勇気の裏には、恐怖がある」


勇気と不安が、バランスを取り始める。


「愛するから、嫉妬も生まれる」


愛情と嫉妬が、表裏一体であることを理解した。


一つずつ、感情たちが調和していく。


フェニックス・ミラージュの姿が安定し始めた。


「ミラ...すごい...」


ハーゼルが驚いている。


「みんな!私の声を聞いて!」


仲間たちに向かって叫んだ。


「感情を否定しないで!全部受け入れて!」


最初に反応したのはユイだった。


「怖い...でも、怖いから勇気が出るんだ」


ブレイブラビットの震えが止まった。


タケルも続く。


「悔しい気持ちも、次への原動力だ!」


一人、また一人と、感情をコントロールし始める。


全員の感情が安定した時、奇跡が起きた。


それぞれの願いペットから、12色の光が立ち昇る。


光は空中で混ざり合い、巨大な花のような形を作った。


「これは...」


『12感情完全調和:エモーショナル・ブルーム』


感情の大輪が、理科室全体を包み込む。


暴走していた機械が、穏やかに停止した。


花の中心から、何かが降ってきた。


キラキラと輝く、水色の宝石。


『絆の願珠、獲得』

『人と人、心と心をつなぐ願いの結晶』


12個目の願珠を手にした瞬間、温かい気持ちが広がった。


これは、今日みんなで作り上げた奇跡の証。


「あと一つ...」


願珠を見つめながらつぶやいた。


でも、その時――


パリン!


窓ガラスが一斉に割れた。


冷たい風が吹き込んでくる。


「来たわね」


ハーゼルが身構えた。


黒い霧が渦を巻きながら、一人の人影を形作っていく。


長い黒髪、整った顔立ち。でも、その瞳には何も映っていない。


まるで、底なしの闇のよう。


「はじめまして、ウィッシャーたち」


声に感情がない。機械のように平坦だ。


ナイトメア団首領――ノクターン。


ついに、最強の敵が姿を現した。


「12個も集めたのね。予定より早い」


ノクターンが手を上げる。


すると、私たちの願いブックが激しく振動し始めた。


「何を...!」


画面にノイズが走り、感情ゲージが次々と消えていく。


「感情なんて、いらないでしょう?」


ノクターンの声が、直接頭に響いてくる。


「痛みも、苦しみも、全て消してあげる」


フェニックス・ミラージュが苦しそうに羽ばたいた。


「やめて!」


でも、ノクターンは微笑んだ。


いや、微笑んだように見えただけかもしれない。


その表情には、何の感情もなかった。


「最後の願珠は、私が持っている」


黒いコートの中から、真っ白な宝石を取り出した。


『創造の願珠』


13個目の、最後の願珠だった。


「これを手に入れたければ...」


ノクターンの姿が、黒い霧とともに消え始める。


「明日の夕方、学校の屋上で待っている」


最後に、こう付け加えた。


「感情を捨てる覚悟があるなら、来なさい」


霧が完全に消えた後、理科室に重い沈黙が流れた。


割れた窓から入る風が、冷たく頬を撫でる。


「ノクターン...」


ハーゼルの顔が青白い。


「彼に会ったら、みんな感情を失うかもしれない」


でも、私は拳を握りしめた。


12個の願珠が、優しく脈打っている。


「行くよ。絶対に」


フェニックス・ミラージュが、力強く鳴いた。


明日、最後の戦いが始まる。


感情を守るか、それとも失うか。


全てが、明日決まる。


**(第14話「願いブック、完全破壊」へ続く)**

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