のっぺら電車

赤澤月光

第1話


ある日、田舎町の小さな駅に「のっぺら電車」という不思議な電車が現れました。電車は古びた外観で、どこか妖しげな雰囲気を漂わせています。町の人々は噂を立て、「乗ったらのっぺらぼうになってしまう」という言い伝えを信じるようになりました。


主人公は好奇心旺盛な中学生、ユウタ。彼はその噂を聞いて興味を持ち、友達のミキと一緒に電車に乗ることに決めました。「本当にのっぺらぼうになるのかな?」と、彼はワクワクしながら電車のホームに向かいました。


電車が到着すると、何とも言えない不気味な音が響きます。そして、中に入ると、どこまでも続くような長い車両に、薄暗い照明が灯っていました。二人は心を躍らせながら座席に座り、出発を待ちました。


電車が走り出すと、周囲の景色が徐々に変わっていきます。人々が乗り込むたびに、目の前で顔が変わっていく様子が見え、彼らは次々とのっぺらぼうになっていきました。ユウタとミキも驚きながらも、「本当にのっぺらぼうになったらどうしよう!」と笑い合いました。


しかし、次第に二人の顔も怪しむべき兆候を見せ始めました。鏡のように滑らかな顔に変わっていくのです。「やばい、マジでのっぺらぼうになっちゃう!」と慌てるユウタ。しかし、彼の心には逆に興奮が広がっていました。


ついに、二人は完全にのっぺらぼうになってしまいました。周囲の人々も同じ状態で、電車の中はのっぺらぼうだらけ。ユウタはその瞬間、自分たちの姿を見て驚く反面、面白さを感じました。のっぺらぼうになることで、普段の自分たちとは違った自由な気持ちを味わっていたのです。


電車はどこかへ向かって走り続け、ユウタとミキは仲間とともに大騒ぎしました。怖さと楽しさが入り混じり、彼らは電車の旅をしながら体験を共有しました。


結局、夜が訪れるころ、電車が元の駅に戻ったとき、彼らは元の姿に戻ることができました。のっぺらぼうとしての経験は忘れがたいものとなり、友達と一緒に過ごす時間の大切さを再認識することができました。


ユウタとミキは、彼らが乗った「のっぺら電車」のことを町の伝説として語り継ぐことにしました。そして、時折「次はいつまたのっぺら電車に乗ろうか」と笑い合うようになりました。なぜなら、時には自分を忘れて遊ぶことも大切だと、彼らは学んだからです。

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