通知-スマホがあなたを変える物語-

九重螺旋

# プロローグ:異常な通知

深夜2時47分。


拓海のスマホが**ブッ**と震えた。


ベッドの上で半分眠りかけていた拓海は、反射的にスマホを掴む。いつものように。1日247回目の、あの動作。


画面を見る。


通知はなかった。


「また誤作動か」


最近多いんだよな、こういうの。拓海はそう思いながらも、なぜかホーム画面を眺めていた。


Instagram、Twitter、TikTok、YouTube、LINE、Discord...


いつもの見慣れたアプリたちが並んでいる。でも、なぜか違和感がある。


何かが、ひとつ増えている。


右上の端っこに、見たことのないアイコンがあった。真っ黒な正方形に、白い文字で「集中」と書いてある。


「こんなアプリ、入れたっけ?」


拓海は眉をひそめた。最近アプリをダウンロードした記憶はない。課題に追われていて、新しいアプリを試す余裕なんてなかった。


削除しようと思って、長押しする。


でも、削除ボタンが出てこない。


「なんだこれ?」


もう一度長押し。やっぱり削除ボタンは出てこない。まるで、システムアプリみたいに。


好奇心が勝った。拓海はそのアイコンをタップした。


アプリが起動する。


画面は真っ黒。


そして、画面の中央に、白い文字が一行だけ表示された。


**『あなたはスマホを見ています』**


「...は?」


拓海は思わず声に出した。当たり前すぎる。今、確実にスマホを見ている。馬鹿にされているのか?


でも、画面を見つめていると、次の行がゆっくりと現れた。


**『でも、この画面を見続けているあなたは、もう普通ではありません』**


背筋が、ぞくっと寒くなった。


なんだ、この気味の悪い文章は。


でも、なぜか目が離せない。


次の文字が現れるのを、じっと待っている自分がいる。


**『なぜなら、あなたは今...』**


文字が止まった。


「続きは?」


拓海は画面をタップした。スワイプしてみた。でも、何も変わらない。


待つしかない。


そして気づく。


いつの間にか、3分間も同じ画面を見続けていることに。


普段のスマホの使い方だったら、もう10回は他のアプリに切り替えているはずなのに。


その時、画面に最後の文字が現れた。


**『...30秒以上、同じ画面を見続けることができる人間に、変わり始めています』**


拓海は息を呑んだ。


まさか。


このアプリは、自分を**観察**している?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る