🚪僕たちの怪奇ファイル 第1話 手まねき地蔵と呼ばれた場所

@takapapa0716

第2話

【前書き】


中学生になった僕たちの“新しい冒険”は、かつての秘密基地ごっことは違う。

今度のテーマは——幽霊や都市伝説。

ちょっと背伸びした、でもワクワクが止まらない調査活動だ。


最初の舞台は、ある県道沿いにぽつんと佇む「手まねき地蔵」。

「目を合わせると呪われる」「女の子の声が聞こえる」といった噂が囁かれるこの地。

果たして僕たちは、何に出会ってしまうのか——。



【本文】


「今回のやつは、マジでヤバい。」


そう言ってマメが持ってきたのは、どこかの県名がついた『本当にあった恐怖体験』みたいな本だった。

パッと見は、いつもの怪談本と大差ない。だけど中身を開いて驚いた。


──○○新聞、○年○月○日掲載。


…新聞記事ベース?

なんだか一気に現実味が増して、心臓がドクンと鳴った。

あの“ワクワク細胞”が、また暴れ出したのだ。


で、調査地に決まったのが「手まねき地蔵」。

国道沿いにぽつんと立つその地蔵は、見る人によって「手の角度」が違うとか、

深夜の事故時刻に通ると「女の子の声が背後から聞こえる」とか——

信じたくないような、でも確かに気になるウワサばかりだった。


「なあ……この道、人いなさすぎじゃない?」


現地に向かう途中、まっちゃんが自転車をこぎながら弱音を吐いた。

図体のわりに、こいつはけっこうビビリだ。


その道は、まさに“そういう雰囲気”だった。

街灯も少なく、田んぼと草むらばかりの一本道。

そして、その端に——

いた。


ぽつんと、小さな地蔵が。


「うわ…これ……」


自転車を降り、僕たちは地蔵の前に立った。

けれど、なぜか一歩だけ、足が前に出ない。

マメの膝が、かすかに震えているのが見えた。


「これ……ほんとにヤバいやつだぞ……」


「おい、来たがったのお前だろ!」


「…なんか来る。絶対来る気がする。」


いやいや、そんなバカな。

でもその瞬間、空気がピリッと張り詰めたような——そんな気が、した。


そして。


「……ママ……」


背後から、かすかな少女の声。


……

……

……

(来るか!? ついに来るか!?)


……何も、起きなかった。

いや、正確には「何か起きるんじゃないか」という空気だけが、僕たちを包んでいた。

見てはいけない“何か”が、確かにそこにいたような。


「ヤバい、帰ろう!」


沈黙に耐えきれなくなったマメが、僕の服を引っ張って走り出した。

その顔は真っ青で、たぶん……何かを“見て”いたのかもしれない。


でもさ、「見えなかった=何もなかった」って、そう簡単には言えないと思うんだ。

あの空気、あの静けさ。

いつもの僕たちの“ワクワク冒険”とは、まるで違ってた。


「マジで怖かったんだけど……」

と、まっちゃんもポツリ。

でかいくせに、やっぱりビビリだな。


マメは何も言わずに自転車をこいでる。

その横顔は……泣きそうだった。


「マメ、まだ始まったばかりだぞ?」


そうからかうと、マメは中指を立ててきた。

うん、それでこそマメ。

ちょっと安心した。


でもさ——


あの帰り道、僕の自転車の後輪から「キィ……キィ……」って、

まるで誰かがついてきてるような……そんな音がしてたのは、気のせいだったんだろうか?


……だったら、いいんだけど。



【後書き】


シリーズ第1話、読んでいただきありがとうございます。

今回は、東北に実在する地蔵伝説をヒントに構成した“初調査回”でした。

「ありがたい存在」として祀られながら、どこか怖さをまとった地蔵という存在——

その“あいまいな境界線”が、この話のテーマだったように思います。


次回は、さらに一歩踏み込んだ心霊スポットへ。

懲りずに向かう僕たちの“ワクワク探偵団”に、また何かが起こります。



▶️次回予告


次なる目的地は、廃村の畑に現れる“人魂”。

夜の集落跡、静まり返った畑の向こうに、不自然な“光”が浮かび上がる——


第2話『廃村の畑に飛ぶ人魂』

──僕たちの怪奇ファイル、さらに深く。

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