このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(297文字)
とある特徴を持つ奇形の魚が捕れた、という話から物語はスタート。普通なら地方のちょっとした騒動で片付けられてしまいそうなそれは、しかし何故か大掛かりな調査隊が組まれる結果に。ヒレが人間の手になった魚。噂よりもずっと多い奇形の魚の数。魚でありながら視線を向けられているような感覚。何処からか向けられてくる何者かの視線。徐々に不穏な要素が積み重なっていくのが不安感を掻き立てられます。一方で調査隊の面々の会話が和やかかつ冷静なだけに、なお一層不安要素が引き立っています。
静かな村に現れた“奇形魚”の謎を巡る調査が、徐々に常識を覆していく。学者と騎士たちの丁寧な会話の積み重ねが、不気味さと知的スリルをじわじわと育てていく構成が見事です。特に“当たり前”が反転する終盤のやり取りは圧巻で、読後にゾクリと背筋が震える。観察と推論が好きな読者にはたまらない一作。静かな狂気が潜む物語を求める人におすすめです。