光彩

体が動かない。

 意思があるのに動けない。

 ぴくりとも動かない体にシンデレラは恐怖の檻に囚われた。

 誰か助けて。

 言葉にならぬ言葉しか出てこない。

 その時、囁くような声。

 (シンデレラさん、ツバサさん)

 誰?

 だが、その声を聴いて安心した。

 明確になるにつれ分かったのだ。

 ケイレブ王子の声だと。

 (大丈夫、私たちが今助けます)

 

 目を覚ますと、先ほどの城とは全く違う光景が広がっていた。

 幻想的で、至る所に色鮮やかな花々が咲き乱れている。

 「ここは?」

 「あれ? シンデレラさん」

 ツバサが驚いて周りを見ている。

 「あの怪我大丈夫?」

 「あ、ああ大丈夫です」

 「そっかあ」

 「あの……すみません、俺……」

 「え、謝ることないって」

 ツバサが頭を撫でた。

 「ほらほら俺は大丈夫だって」

 「……」

 涙が流れた。

 こうして無関係な人を巻き込んでしまったり、怪我をさせてしまったりした自分に。

 ツバサは慰めるように背中をさすった。

 「シンデレラさん、ツバサさん」

 ケイレブ王子だ。

 「ケイレブ王子」

 「シンデレラさん、ツバサさん。ここは安心できる場所です」

 「はい……」

 シンデレラは落ち着きを取り戻した。

 「あの、ここは一体?」

 「ここは僕らの光の国です」

 「『光の国』?」

 「説明しますね」

 ケイレブ王子がにこやかに言う。

 「僕らは光の一族として生を受けており、こうして人間界の平和や民たちの安寧のためにいるんですよ」

 現実離れした言葉に、脳が理解を拒んだ。

 「わかりませんよね。でも、こうして世界で魔法を使えることが出来るのは光の国のものたちがしているんです」

 「ま、まあ」

 ツバサが混乱しているものの、納得している。

 しかし、無理矢理納得させないと進まないのだろう。

 「でも、こんなことを突然言われたら分からないですよね」

 ケイレブ王子が笑った。

 「あの、一体『光の国』とは……?」

 「光の国とは、人間界が生まれるはるか前からある天界なんです。あなた達人間を守るための」

 「へえ~。光の人たちはこうして守ってくれたんだ」

 「そうなりますね。でも最初から平和ではなかったんです」

 「そうなんですか?」

 「光があるように闇の国もありました。闇の国は魔のものたちを従え、幾度どなく光の国と争いを行ってきました。これは僕が誕生する前ですので、伝言で聞いたものですが」

 「……」

 シンデレラは素直に聞いていた。

 光の国と闇の国。

 それは、子供の頃に伝記で見たことがあったのだ。

 「幾多の犠牲と血が流れ、光の国と闇の国は戦争を止めました。平和のために、そして未来のためにと。ですが……その中で反対したものがいたのです」

 「反対したものが?」

 「ええ。彼らは争いと血を好むものたち。忌むべきものたちです」

 ケイレブ王子は悲しい瞳をした。

 「それが、『影なるもの』たちでした」

 

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