男たちの挽歌

男たちの孤独

 武闘会前日。 

 ギュネスとリトの前に、三人は正座していた。

 「明日、武闘会だ」

 静かに頷く。 

 「お前たちはよくやった。明日は全力でいけ」

 ギュネスは威厳溢れるものだった。

 その日はそのまま解散した。

 自主練しようかとなったが、休養し明日に備えたほうがと結論に至った。

 「ストレッチして、怪我の防止に努めよう」

 シンデレラの言葉に二人は納得した。

 

 シンデレラは、道場近くの図書館に来ていた。

 人も少なく、静かだ。

 特にあてもなく来たが、シンデレラは本棚を見ていた。

 小説、哲学書、指南書。

 本を読むことは好きだ。

 自分の持っている孤独をほんの少しでも忘れることが出来るからだ。

 冒険小説や、ファンタジー小説を読んでいてワクワクした子供時代。

 懐かしい本をみて手に取る。

 夢中になって読んだ冒険小説だ。

 パラパラと読むと、一気に思い出が蘇った。

 (懐かしいなぁ)

 そうしていると、「お兄ちゃん」と小さな声が聞こえた。

 見るとハラだった。

 「ハラ。来ていたのか?」

 「うん。夏休みなんだ」

 図書館なので話すと声が響く。

 ハラとシンデレラは一度外を出た。

 「お兄ちゃんは明日武闘会出るんだろ?」

 「ああ。今日はお休みして身体を回復させてるんだ」

 「そうなんだ」

 「いつもいる子たちは?」

 「家帰った……。僕は残ってるんだ」

 ハラがつまらなそうに言った。

 オウマの道場では、学校を兼ねた場所も提供しており、学生寮が併設されている。

 親御さんたちにとって、肉体的、精神的な成長をもたらしてくれる。

 規律を学べるという点では、かなり魅力的に見えるのだろう。

 オウマの道場だけではなく、他の道場もこうした社会貢献をしている。

 その裏側としては、学生たちから学費を貰える。社会貢献することで、王家からの援助を貰えるという旨味もあるからだろうが。

 学生たちの中には、遠方から来る学生もいる。

 その中にはスポーツ、学業での特待生招待もある。

 他にも、遠方に1人で行かせることで成長を促す要因もあるが。

 様々な家庭事情もあるので、一括りには見れないものの。

 「お父さん、お母さんいるのっていいなぁ」

 「え」

 「僕、いないんだぁ」

 いないんだぁの口調が幼いものの、不釣り合いな諦めと悲しみがあった。

 子供がそうした諦めと悲しみを持つことに、なんだか憂鬱な気持ちになった。

 「俺等がいるさ。だから寂しくない」

 「うん!」

 ハラはまたくるくるした目で、明るくなった。

 

 ハラを道場寮に送迎すると、子供たちがワラワラとシンデレラを見た。

 「シンデレラだ!」

 「シンデレラ兄ちゃんだ!」

 あっという間に子供に囲まれた。

 「シンデレラ兄ちゃん、ご飯食べる?」

 「いいのか?」

 「ご飯の人たち来てくれるから」

 子供たちに連れられ、食堂に行くと数人の高等学生がいた。

 「シンデレラさん!? 本物!?」

 「すげぇ!」

 嬉しいやら恥ずかしいやら。

 

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