XV創造



 生傷だらけの手にバンテージを巻くと、少し痛みが走った。

 あと、もう少しで武闘会だ。

 この日のために。この時のために。

 シンデレラは決意を新たにすると、呼吸をした。

  

 オウマは苛立っていた。

 己の欲しがるものが目の前にあるというのに、それが手に入らないことに。

 幾らシンデレラを何度も恐怖に貶めても、彼は屈することがなく抵抗をするのだ。

 今まで欲しいものは強引に手に入れてきた。

 それなのに、今度の人間はずっと手に入れられない。

 たとえ、シンデレラを無理矢理でも屈することは出来るが、それでも全てを自分のものに出来ない。

 それに、あの欠陥品に対して情愛を持っている。

 この世で一番反吐が出るものに。

 あの男はなぜ抗う。

 鏡の中ではシンデレラが武闘に励んでいる。

 お前を必ず俺のものとする。

 オウマは憎々しげに見ていた。

 

 「あっつ」

 アキラは汗を拭ったものの、それでも止めどなく汗が流れた。 

 止まらぬ汗に不快感を覚えたが、更に焦りがあった。

 シンデレラと忠勝に比べて、己の実力が遠く及んでないように思えて仕方ない。

 グズグズしても仕方ないが、血反吐を吐いても埋まらぬ差が悲しい。

 「アキラ」

 リトだ。

 弓矢の師範代であるが、今はこうしてギュネスの補助をしている。

 どうやら、ここの道場のナンバー2らしい。

 肉体的鍛錬ではなく、精神的鍛錬や格闘技に対する姿勢を伝えてくれる。

 ギュネスと比べて、どこか優しさと女性的な容姿を持っているので慕う道場生も多い。

 「うす」

 「頑張ってるね」

 「そうっすか? シンデレラと忠勝と比べたらまだっすよ」

 「そう?」

 リトがにこやかにいた。 

 「頑張っているから、そうしたことに気づくんだよ」

 「そうなんすかね」

 「流れる汗は嘘つかないさ。もし、それなら一緒に特訓する?」

 「よし、お願いします」

 「もちろん」

 道場に戻ると、シンデレラと忠勝が真剣に話し合いしながら技の練習をしていた。

 (なんか、俺恥ずかしい)

 シンデレラと忠勝の姿を見ると、未熟さを痛感した。 

 アキラは、リトにマンツーマンで教えてもらった。

 もう一度基礎的な動きや、関節の位置、呼吸法。

 シンデレラと忠勝も来て、一緒にやることに。

 「考えながら、頭の中でイメージしながら動くんだ。それを更に自然に出来るように」

 リトの言葉を聞き、頭の中でイメージする。

 

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