Ⅲ破門
呼び出されたオルカは、頭の中で出場を告げられると考えていた。
希望的観測に溢れていた脳内は、部屋に入ると一瞬にして消え去っていった。
鋭く、怒りを含んだ目つきのギュネスとリトがいる。
背中に冷や汗が伝っていき、言い訳のオンパレードが繰り広げられる。
あの女が何か言ったのか?
「座ってくれ」
今まで話を聞いてくれたギュネスと違い、威厳が溢れ厳しい目をしている。
「はい」
オルカは目の前に座った。
「オルカさんですよね」
その反面リトはどこか優しい声をしているが、オルカの嗅覚がリトの侮蔑の匂いを嗅ぎ取っていた。
オルカは人の顔色を常にうかがい、こうして裏でコソコソしていた男だった。
だが、ばれることも多々あるがそれでも改善をしなかった怠慢をこうして見せつけられる。
今までは有耶無耶なっていたが、今回は違う。
「あの何でしょうか……」
「今までのことなんだが」
ギュネスがまっすぐにオルカを見つめる。
純粋に強さを求め、己を律している瞳にオルカは思わず目を逸らしてしまった。
その行為は己が、ギュネスとは全く反対だということを認めることになる。
「率直に言おう。オルカ、君はかなり問題を起こしている」
「も、問題って‼」
「問題を起こしているんだ」
「で、ですが‼ 俺は、あの、俺……あの」
「……」
「なぜあの女や子供が上なんだってことだ‼」
激情に駆られたオルカは唾を飛ばした。
「あの女もガキも‼」
「オルカさん。落ち着いて」
「俺は冷静に話し合いをしているんだぁぁああ‼」
オルカは力の限り机をたたいた。
机は大きな音を立てて、床に反動した。
「なんでだ‼ ふざけるなあああああ‼」
「ふざけているのはお前だ‼」
ギュネスが立ち上がり、胸倉をつかむ。
岩のように硬い拳が、オルカを大人しくさせた。
「オルカ‼ いい加減にしろ‼ お前は口を開けば全て誰かのせい、みんなのせい‼ お前の実力不足を棚にあげるんじゃない‼」
「……」
オルカは答えられず、あわあわと口を動かした。
しかし、言葉を出てこない。
ギュネスの鼻息が聞こえるほどの距離。
「いいか、お前がその態度が出来たのは、周りが許してくれていたからだ」
「……あ、だ……」
「言い訳をするな」
リトに助けを求めようとするが、リトは何も言わない。
何度も見てきた軽蔑がこもった目で見ているだけだ。
ああ、この目だ。
オルカが何度も繰り返し見てきた軽蔑の目が感情を失わせていく。
「オルカ」
ギュネスの底の低い声が一層恐怖をかきたせる。
「いいか。お前は今日限りで破門だ。これから一切こうして門をくぐるな」
「え」
「自分の言動に責任を持てぬ者はいらぬ」
ギュネスの手が離れ、オルカは床に座り込んだ。
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