Ⅱ愚者の言葉

 ギュネスは辟易しながらも顔には出さずに、オルカの『意見』とやらを聞いていた。

 この男はなぜ年下のシンデレラがオウマのもとにいるのか、実力が伴っていないのにいるのか? と最初は言っていたが、そこから脱線し『意見』という名の愚痴に変換されていく。

 道場長として意見を聞かなくてはならないし、公平・公立を掲げ、道場生たちの意見を聞くことはあるが、この男にはかなり辟易する。

 「だから俺としては」

 「そうだな」

 何度目の会話だろうか。

 そして、彼は武闘会に出られないことに収束し、なぜ自分よりも下の女が段位を持っていると話す。

 正直言ってしまうと、オルカは実力が伴っていないのだ。

 実力が無いものの、求めるものがかなり高いのでそのギャップがかなり出てきてしまう。

 焦り、不安に変わりこうしてギュネスや、相談役に愚痴を投げているがそのようなことをしても、何にもならないことを彼は知らない。

 「いいですか? 彼女は段位に合わないし、そもそも品位が無いんですよ‼」

 「そうか?」

 「彼女は合わない‼」

 「……」

 ギュネスがオルカの後ろにいるものを凝視した。

 「すみません……」

 オルカが絶句する。

 本人である彼女がいたのだ。

 彼女アルンは冷たい目でオルカを見た。

 「よ、用思い出したので」

 オルカは逃げるように去っていく。

 「……すみません」

 「いいんだ。アルンさん」

 アルンは疲れた目でオルカの去った後を見た。

 「また私のことを言っていたのですか?」

 アルンは冷たい声だ。

 「あの人、いつも言っているんですよ」

 「……」

 ギュネスは考え込んだ。

 このままでは、かなりの被害が出ている。

 今までは自分が我慢していたらよかったものであったが、他人が巻き込まれてしまっている。

 「アルンさん。そうした悪口はいつから?」

 「ええっと、私の段位が上がった頃から……元々周りの人たちもかなり距離を置かれている人でして」

 「そうか……」

 「私と同い年の男性で段位が同じ人にはいかないんですね」

 「……分かった。これはかなりの問題だ」

 ギュネスは決心した。


 ギュネスが作業所に戻ろうとすると、オルカがいた。

 「あ、ええっと……へへ」

 笑って誤魔化そうとする魂胆が、あまりにも見苦しかった。

 ギュネスは会釈すると、作業所に戻りオルカの処置を考えた。

 他の作業をしていると、リトが来た。

 「少しいいか?」

 リトに先ほどのことと、オルカの今後どうするかを伝えた。

 「……そうですか。しかし、他の道場生たちへの規範にもなりませんし、何よりも女性に対しての行動も目に余ります」

 「そうなのか?」 

 「多分本人的には会話をしているつもりなのでしょうが、どうも踏み込んだことを聞いたり、女性にだけ指導をしようとしたりと聞いたので……」

 「……」

 「特に最近はそれが目に余る……と」

 「わかった。これ以上はやむを得ん。オルカの出場禁止と破門だ」

 「わかりました」

 「俺から伝えておく」

 リトは渡された書類を見た。

 オルカの顔はどこか異質なものに見えた。

 

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