第6話
週も後半に差し掛かった木曜日。
昼休み、食堂の片隅でコンビニのおにぎりを食べながらスマホを見ていると、突然背後から声をかけられた。
「圭太、最近なんか……妙じゃない?」
声の主は、山田玲奈だった。
中学からの幼馴染。快活で、誰にでも物怖じせず、でもたまに怒るとちょっと怖いタイプ。
「……なにが?」
俺がしらばっくれると、彼女は俺のスマホをちらりと見てニヤリと笑った。
「“おはよう”って、白石さんからだよね?」
「っ……どこで見た」
「中庭でこそこそ喋ってるとこ、昨日見た」
完全にバレていた。
「なに? あんた、白石さんと付き合ってるの?」
「ち、違うって……! 付き合ってない。ただの……その、相談?」
「ふーん……」
玲奈の目が一瞬だけ寂しそうに細められた気がしたけど、すぐにいつもの表情に戻った。
「まあいいけどさ。そろそろちゃんと、まわりの目とか考えたほうがいいよ?」
そう言い残して、玲奈はさっさと自分の席へ戻っていった。
◆
放課後、中庭に行くと、すでに結月が待っていた。
「ねえ、今日……ちょっと雰囲気変じゃなかった?」
「……バレてる、っぽい」
俺が正直にそう言うと、結月は少しだけ表情を曇らせた。
「やっぱりか……。誰かに見られてるんだよね、最近」
「でも……この時間、俺は好きだよ」
思わず、口から出た本音だった。
結月は驚いたように俺を見たあと、すぐに笑ってくれた。
「うん、私も。だから、もう少しだけ……続けたい」
ふたりのあいだに静かな風が吹いた。
けれど、俺の心の奥には、さっきの玲奈の言葉が引っかかったままだった。
“まわりの目を考えろ”──
それは、たしかにその通りだ。でも──
俺にとって、この時間は、そんなものよりずっと大事だった。
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