第4話影の暗闇

「大丈夫?」

コンコンという扉をノックする音と共に優しい声がする。

ダッと脳の緊張の糸が切れた。

冷静に戻った脳が心配をかけるなと体に指令を出す。

僕は扉を開けて顔を出す。

「大丈夫です…。」

心配をかけないようにと声を出す。

「そう?顔色…悪いよ?

朝になってもしんどそうだったら一緒に病院行こうね。」

そういう女性。

これは心配されているのだろうか。

迷惑をかけてしまっているのだろうか。

分からなくなってしまった僕は

「ほんとに…大丈夫なんで…。」そう言って部屋に戻ろうとした。

「ダメ!」

足を踏み出した僕の手を掴み大きめの声を出す。

「遠慮しない!しんどい時はしんどいって言う!

辛い時は辛いって言う!

まだ子供なんだから心配されて当たり前!迷惑かけて当たり前!

ちゃんと言ってくれないと分かんないし、余計心配しちゃう。」

トイレの前の廊下に電気がついていたことに気づかないくらい僕は母さんに縛られていた。

足音を立てないようにここまできたのに、先生にはバレていたみたいだ。

今更になって心配されないようにしていたことが余計心配させてしまっていたのかと思うと申し訳なくなってしまう。

「大丈夫!?涙流れてるよ?

もしかして怖かった⁉︎」

慌てる先生を見てより涙が出た。

申し訳なくて涙が出た…。

と言うのは言い訳でしかないか。

やはり優しい母さんはどこにもいなかったのかもしれない。

自分が生み出していただけなのかもしれない。

この先生を見ると本当にそう思った。

早くここを出て自立することばかり考えていたけど、

もう少し甘えていいのかもしれない。

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暗闇 冬野猫 @fuyufuyunekonekotk

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