猫様は気まぐれ

@yakigo

第1話

 俺は憑かれていた。家の中では心霊現象がたびたび起こり、物が落下したり家電が勝手に作動したりして眠れぬ日々が続いた。桐原、辻山と俺の3人軽い気持ちで肝試しなんかに行ったがために・・・

 ふとスマホを見てみると香菜から着信があった。画面をタップしすぐに出ると、香菜「義男!大丈夫なの?眠れてる?」とまくしたてるように言われた。

 俺は「ああ少しは慣れたよ毎日脅かされてるけどな。」と答えた。

 香菜「お祓い出来る人を見つけたのアパートの下にいるから出てきて。」

 「分かった今行く」と言い部屋を出た。香菜の車が止まっており、細くて背の高い男が隣にいた。俺が「この人は?」と尋ねた。香菜「海星神社の神主さんよ。」と教えてくれた。

 神主は物腰が柔らかく「大変でしたね霊障がありお困りだとか」と語りかけた。俺「そうなんです。肝試しに泉高原に入ってしまいました。そこで多分」と答えた。

 すると神主は「猫様を飼いなさい猫様は神の使い、もしくは神と同等の存在ですから」と言ってきた。俺は理由が分からなかった。固まっていると香菜が「今日グレーの保護猫をもらってきたのもし義男が面倒見きれないなら私が引き取るから」といい猫用のキャリーケースを出してきた。

 俺「ちょっと待ってくれよいくらなんでもそれは・・」 確かに家の中はペットOKだったはずだが。

 神主「安岡さんとりあえず家の中を見せていただけますか?それに猫様も休ませたいですし。」

渋々俺は二人と猫を案内した。

香菜は用意周到で猫のご飯やトイレ、砂等必要なものを全て持参してきた。俺のお祓いにかこつけて本当は猫を飼いたかったんじゃないかと思ってしまった。

俺は神主に「霊はどうですか?何人くらいいるのです?」と聞いた。

神主「どうも居た痕跡はありますが隠れてますね。猫様の姿を見て恐れたのでしょう。」

俺はこいつ正気か?と疑ってしまった。すると神主が噴霧器を取り出し「霊が出てこられないように部屋全体に聖水を撒きます。水ですのでご容赦下さい」と部屋全体に聖水とやらをかけていった。その作業が終わると香菜が「猫の名前付けて」と寄ってきた。俺は悩みながら何となく空を見上げるのが好きなので「じ、じゃあソラって名前にするかな」 香菜「ソラ君だねよろしくね!」

ソラはグレーの猫で雑種で何となくスコティッシュフォールドみたいな感じだった。推定2歳らしい。

 神主「猫様も家が決まり良かったです。これからは霊障はなくなるでしょう」

俺「所でお祓い料はいくらですか?」と聞いた

神主「あはい今回はお安くしており5万円です」俺「結構しますね、持ち合わせがないので振り込み用紙下さいと」言い、ついでにお祓いの相場を聞いてみた。神主は「まぁお祓いする側も命がけですからね、本来は数十万〜百万位とっているところもありますよ」と言っていた。

 その夜、香菜は泊まっていった。飯を作ってくれてソラの面倒も見てくれて大変助かった。こんな穏やかな日を迎えられるとは思わなかった。本当に猫サマサマだなと感じた。

 数日後その束の間の幸福は打ち消された。香菜からメールがあり、文章を見ると


ー義男、本当にごめんなさい好きな人が出来ました。別れて下さい。ソラの世話が困難であれば私   が引き取ります。お世話になりましたー

と書かれていた。

あんなに楽しそうにして次はお礼に外食に誘ったのにどうしてと困惑した。そして学生からの付き合いで結婚も視野に入れていたのに、本当にショックだった。しばらく考え俺は香菜に電話した。俺「あっもしもしこんな大事なことなぜメールで説明もないの?」 

 香菜「義男ゴメンね。会社の上司と付き合うことにしたの。」

俺「そんな、いきなりなんなんだよ!確かにここ1ヶ月会ってなかったり、連絡あまりしなかったけど、いやもういいよ猫は俺がきちんと面倒見るからじゃあな!」 と言いスマホを切って叩きつけた。その日は何もする気が起きなくソラに食事を与え撫でてさっさと寝た。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る