短編集『語られなかった想いたち』──個の亡霊プロジェクトより

Hibiki Moriyama

はじめに

 ──この短編集には、ひとつの〝世界〟を語る輪郭は、はじめからない。残されているのは、名前だけの人、記録されぬ声、意味にならなかった小さな祈り。

 けれど、その断片たちは、やがてどこかで物語となる静かな予兆を秘めている。


 本編『個の亡霊』──その世界に至る前の、いくつもの時代の、誰にも知られぬ破片が、ここに並んでいる。

 語られなかった想いの残響が、あなたのどこかで何かの〝始まり〟と重なったとき──

 もしかしたら、それは、世界のどこかに、まだ人間がいた証になるのかもしれない。


 これは、〝物語〟の始まる前に、そっと架けられた梯子である──

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