家族が増えた気分だ

とりあえず彼の頭から洗う望…


誰かの頭をシャンプーするなんて、なんか弟か息子が急にできた気分だ。ずっと一人っ子だったから俺は…


「目に泡が入ると痛いぞ〜…目瞑っときな。」


望が彼にいうと、彼は両手で目を押さえた。

もしかしてまだ瞼を閉じるって発想がないほど体に慣れてないのか?それとも心が子供なのかな⁇そう思って可愛く思う。

確かにぬいぐるみにはまぶたってないよねと…


『やっとお風呂場まで一緒に入れたね。むーくんずっとママさんにお願いしてたよね。嬉しい⁇』


彼は望に聞いた。


「何言ってんだよ。もう大人だし1人で入れるし…あの時はお風呂も一緒に入りたいくらいお前から離れたくなくて不安で…」


って何普通に答えてんだ俺は⁉︎と望は自分に突っ込む…


『…僕は嬉しよ‼︎…そっかぁ…大人って、1人で平気になる事なんだね。僕はずっと…暗くて寒くて寂しかっ…』


そう言いかける彼に望はシャワーをぶっかけた。勝手に捨てられた後のピノの事を思うと感受性が豊かな望は耐えられないから黙らせようとしたのだ。


ブフーッ‼︎ぺっぺ…


「あっ…口閉じてろってのも言うの忘れてた。ごめんな…」


望は真顔で言う。

そして、そそくさと彼の身体を洗っていくのだった無言で…


洗い終わると風呂場から彼を引っ張り出して、ささっとバスタオルで拭いていく。


服も自分のやつを着せていくも、小柄だからダボダボ…


望も自分の服を着替えた。


とりあえず彼の手を引きリビングの椅子に座らせると、少し疲れたのか望は冷蔵庫のお茶を一気飲みする。


「人1人洗うのって結構大変だな…母ちゃんも父ちゃんも介護する前にあの世いっちまって逆に良かったのかもな。介護とかきついわぁ…あっ…風呂上がりはちゃんと水分取らないとダメだからな。」


望はそう言うと彼の分もコップを取り出しお茶を注いで目の前に差し出す。


「飲める⁇飲ませた方がいい⁇」


望は座る彼の視線に合わせるようにしゃがんだ。


『飲める…と思うよ。だってずっとむーくんのこと見守ってたから。ジュース飲んだりお菓子食べてたりしてたじゃん。僕を隣に座らせてさ。』


そう言うと彼は両手でコップを持って子供みたいにお茶をごくごく飲んだ。


ちょっと口元から溢れてたけど美味しそうに飲み干す。


「あのさぁ…その“ムーくん”って呼ぶにやめてよもういいおっさんなんだから俺はさ…望でいいよ流石に…」


望はそう言うともういっぱいお茶を注いであげた。


『のぞむ…じゃあ、僕も“ピノ”って呼んでよ。』

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帰ってきたピノキオ〜星に願いを〜 @yoshikichi-445

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