星に願いを
七夕の前夜、俺はなんとなく夜空を見上げていた。
都会で見るより星がよく見える。
なんだか目立つ星に目がいく。
「どうにか…あいつが帰ってきてくれますように…なんつって。」
俺はぬいぐるみのあいつが恋しくてついこんな願いをかけてしまった。
きっと寂しいんだ。実家から出て暮らしてたことだってあるのに恋人もいなかったのに、ついに家族が全滅しちゃあ流石に堪える…
小さい頃、寂しい時はいつもそいつをぎゅーっとして顔に顔を埋めてたっけなぁ…
「何ガキみてぇなこと考えてんだっつうの…」
俺はそう思い、さっさと寝ちまうことにした。
次の日の朝-
トントン…ドンドン…
玄関の戸が叩かれるような音に気づき目覚めた。
玄関に向かうと人影が見える。
「なんで呼び鈴ならさねぇの⁇」
そう思いながら戸を開ける。するとそこには自分より身長は小さめの見知らぬ青年が立っていた。でもなんでだろう?なんだか懐かしい気がするし、落ち着く匂いを感じた。
『ただいまっ‼︎久しぶりだね。むーくん♪』
その知らない青年は“ただいま”と言うし、なぜか俺の幼少期のあだ名を呼んだ。
“望”と書いて“のぞむ”「むーくんはね」とか自分でも言ってた。
「はぁ⁉︎きっ…君は誰かな⁇もしかして俺の母ちゃんの知り合いとかですか…ねぇ⁇あっ…あのそれでしたら母はこの間亡くなってしまって自分は…」
そう言いかけると青年は無邪気な少年のようにむっとした顔で怒って
「むーくん、忘れちゃったの⁇“ピノ”だよ‼︎お星様にお願いしてくれたから、本当の人間の男の子になれて帰ってきたんだよ。ず〜っとむーくんに会いたかった♪」
青年は勢いよく望に抱きついた。その勢いで尻餅をつくように思わず2人で玄関で倒れ込む。
「イッテェなぁ…何言ってんの⁇ピノって俺が可愛がってたぬいぐるみ…お前は人間だろ。見た目変わってちゃわかるわけないだろ⁉︎」
俺は何を言ってる⁇話を信じたのか普通に話に乗って自然とツッコミを入れてしまったことに望は自分に驚く。
『あっ…そうか…ぬいぐるみの時しか知らないよね…この身体じゃ気づかないか。ごめんねむーくん…』
青年はそう言いながら望から離れて立ち上がる。
改めて彼の姿をまじまじと見るとそこらじゅう土だらけの服、顔も汚れている。まるで山で遭難でもしたかのようだった。
「待って、そんな格好で歩いてたら浮浪者だと思われるぞ⁇不審者だって通報もされる…とりあえず入れって」
望は彼の手を引いて玄関に入れて戸を閉める。
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