古色礼讃 ―時代遅れと呼ばれた男。知を紡ぎ、魔法世界を覆す―

りくとれん

第0話

知紡ぎ(ちつむぎ)――それは、ホコリとインクとため息にまみれた、書斎の住人。

古書を解析し、解釈し、翻訳する。知を次に繋ぐ、高尚な営み……なのだが。


今どき杖を振ればピカッと光ってドカンと爆発。理屈や理論など、魔力の前ではチリと化す。そんなノリと勢いの時代だった。


「古書? そんなもん、何の参考になんの?」

最先端の魔法を、コスパ良く学ぶ――魔法学校のカリキュラムを疑う者はなかった。


「500年も前の古書から学ぶ? あの、タイパって言葉知ってます、オジさん?」

そんな言葉は知らない。

しかし古書の、その深さと可能性は誰よりも知っていた。


魔力全盛の、現代魔法の舞台に立つことすら許されなかった男――レオン。青年期を過ぎ、オジさんと呼ばれる歳になっても、彼は懸命に一文字ずつ掘り起こし続けた。

時代遅れと笑われたその知に、未来を変える鍵が眠っていると信じて。


これはモダンな世界から落ちこぼれの烙印を押された男が、アンティークな知識を武器に、(古書のカビと虫喰いに絶望しながらも)運命を切り拓いていく、そんな物語である。

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