第8話 D視点 火の神信仰

ディー視点


 王は神なのかもしれない。火を操る、火の神ヒノカミだ。本当にそう思わざるを得ないほど、王は火を自由自在に使う。


 先日、王に火で焼いたホーンラビットを食べさせてもらった。我が解体し王が火で焼いた。それはもう、この世の物とは思えないおいしさだった。


 火の偉大さをどうしても伝えなくてはならない


 そう決心したものの、我には火のつけ方が分からない。今更気づいたことだが、スキルで創った火はすぐに消えてしまうらしい。我らが王に教えてもらえれば一番いいのだが……。


 最近、王はジェスチャーを多用するのだ。理由は分からない。まさか言葉が分からなくなった……?


 そんなわけないか。


 これはどれほど崇高な目的のためなのだろう。


 我程度に王の考えが読めるとは思えないが、おそらく狩りのためではないかと思う。狩りの最中は喋るのはあまりよくない。だからジェスチャーができれば、より狩りの効率が上がるのだ。


 ……うむ。これぞという理由を見つけられた。また一歩、王の思考に近づけたかもしれない。


 そのとき、角笛のゴブリンが部屋の中に飛び込んできた。


「ぎゃぅお」

 訳:来てください。


「ぎゃ?」

 訳:何?


「きゃう、ぎゃお」

 訳:あの人が、来いって。


 王のお呼びに従わぬわけにはいかない。


 我らは王のもとへと向かう。王にあてがわれた部屋は、新たに掘り出された穴だ。どうにも王には謎のこだわりがあり、穴の形を四角くしてもらっていた。


 実際に完成形を見てみたらきれいだったから、我の部屋もやってもらいたい。


 そんなことを考えながら巣穴を進む。やがて、四角い穴が見えてきた。


 中では王が木の枝を投げていた。


 我は意味を推察する。


 木の枝……投げる……中心に集まる……


 さては、木の枝を集めろと言いたいのか。後で指示を出しておこう。


 王は我に気が付くと手招きをした。我が近づくと、二本の木を持たせる。


 ひとつはずっしりとした木、もうひとつはカサカサとした軽い木だ。


 王が何かを叩くような動作をする。


 我も真似して枝を振った。


 まずは、ずっしりとした方。こちらは前に集落で流行っていた棍棒に感触が近い。


 次に軽い方。


 ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!


 ふむ。これはなんとも軽い感触が癖になる。


 ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!


 空気を切り裂き、枝先は加速する。これは……あれだ。剣よりも軽くて楽しい。


 その時だった。


 


「ぐぎゃおう!」

 訳:火!


 そうだ。火だ。我の手で火をつけたのだ。


「ぐぎゃおう?」

 訳:火?


 王が火を指差して尋ねられる。


 これが火なのか聞いておられるのか。そんなことを知らないなどありえるか…?


 一応、頷いておく。すると王は突然、持っていた軽い木の枝を火の中に放り込む。


 ゴオオォォォ!


 火が天井を焦がし燃え上がった。まるで、火の神が怒りをたぎらせているようなそんな迫力がある。


 そこで、王の真意に思い当たる。


 ……まさか



 ――――火の中に、神を見出せるか尋ねていらしたのか!?


 これは、一大事だ。王が火の神であると思っていたが、王は火の神の使徒であったのだ!


 集落に火の神の信仰を広めなくてはならない!


 その時、王が口を開かれる。


「オウリアム」


 火に枝を放り込みながらはっきりとおっしゃった。王が木の枝を手に取る。


「オウリアムの木」


 オウリアムノキ?これは、あれか。きっとオウリアムが火の神の名前なのだ。


 きっとオウリアムノキは、オウリアム様が授けてくださった神器なのだ。


 角笛のゴブリンに指示を回す。


「オウリアムノキ、ぎゃおす」

 訳:オウリアムノキを集めよ


 角笛のゴブリンは駆け出す。


 さて、我も集落中にオウリアム様への信仰を広めなくてはならない。


 王に一礼すると、我は巣穴の中心部へと駆けだした。






――――――――――――――――――――

 本当は『火の話』オウリアムの話は3話構成のつもりだったけど、ディー視点が1500字で書き終わりませんでした。


 今日はもう1話投稿します。


 それで今度こそ『火の話』オウリアムの話は終わりです。

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