第7話 オウリアム信仰

 朝起きたらオウリアムの木が定着していた。


 僕の言葉の異様な伝達率の早さはなんなんだろう。もはや、ディーとか角ゴブが夜中に集落内を駆けまわって広めたとしか思えない。まぁ、そんなわけないと思うけど。


 とにかく、改めて言葉の偉大さを味わった。僕がオウリアムと言ったらすぐに木を持ってきてくれるのだ。これで僕の『完全ニート計画』が一歩前進した。


 にしても、持ってくる早さが本当に異常だ。明らかに新しく拾ってきている早さではない。たぶんどこかの穴に保管されている。


 そういうわけで、今は巣穴の探索中だ。きっと見つけ出すぜ。


 あ、今お前「巣穴ってぎゅうぎゅうづめで動けないんじゃないのー?」って思ったろ。実はな、今掘削作業を進めさせているんだ。ゴブリンは意外にも理解力が高い。一度手本を見せたら、すぐに作業を覚えてくれた。順調に巣穴は拡大している。今では、都内の通勤ラッシュの電車内よりも断然動きやすい。


 まぁ、崩落しないかだけが心配だけど。


 ともかく、順調に巣穴の奥へ奥へと進んでいく。オウリアム~どこにいるんだ~。


 いない、いない、いない、いない……


――――角ゴブの角笛コレクションが見えたのは気のせいだな。


 角ゴブの部屋の次の穴、そこに大量の枝が積んであるのを発見。


 みぃ~つけたっ!


 手触りヨシ!音ヨシ!合格!


 本当に全部オウリアムの木だ。……え、これを一晩で集めた?まじか。


 ゴブリンたちの作業量には感服の念が絶えないでございます。ほんと、みんなワーカホリックだから頼んだことがすぐに終わっている。


「オウ!ぐぎゃおぅぐぅげ?」


 ディーと角ゴブだ。オウは僕のことを言っているのか?ゴブリン語でどういう意味なんだろ。オウが固有名詞と仮定して……いや、呼びかけか?……ぐぎゃおぅだから火……火がいるのか的な意味だろうか。


「オウリアムノキ。ぐぅっげ」


 オウリアムの軍団を指差している。うーん、分からないからとりあえず褒めよう。


 ディーの肩をポンポンし、適当に思いついたゴブリン語を言っておく。


「ぐぎゃおぅ」

 訳:火。


 火って言ってるだけのやばい奴?気にするな。僕はやばい奴であってるから。


 僕はしばらくオウリアムを眺めている。あぁ、これ全部がお肉の糧となると考えると幸せだな。


 僕はニマニマと笑う。


 そんな僕をディーは期待のこもったキラキラとした目で見ている。


 えっと、なに?火をつけてほしいのか?別にやるけど自分で着火できるろうに。


 僕は手頃なオウリアムの枝を掴んで、巣穴の外へと向かう。洞窟みたいな閉鎖空間で火起こしするのは危ないからね。……森林も大概だけど。


 僕たちは洞窟を上っていく。なぜか道中で出会うゴブリンが背後についてくるのは気にしない事にしましょう。そうです。みんなおめめを輝かせて「ぐぎゃおぅ」やら「オウリアム」やら言いながらついてくるのは気のせいです。


 しばらく歩き大軍団となった僕たちは洞窟の入り口にたどり着く。そこには、キャンプファイアーを組んでいる角ゴブの姿があった。



――――なんかいつの間にか消えたなって思ったらそういうことかよ。……ていうかこんなの教えてないんだけど。相変わらずゴブリンの頭脳が恐ろしい。


 僕は用意されていたオウリアムの枝をとる。ご丁寧に枝は先端部が削られている。


 ぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐり


 真顔で行うぐりぐりをゴブリンたちは感嘆の息をついて見守る。


 煙がプスプスと出始め、手元が熱くなった。火種が出来たのだ。


「えい」


 思いっきり日本語を使いながら、火種をオウリアムのキャンプファイアーに投げ込む。


 ドオオォォォンッ!!


 爆発音が響く。火種入れただけでこれって、ほんとにオウリアムの発火はおかしい。


「ぐぎゃおおぉぉぅっ!」

 訳:火ぃっ!


 ゴブリンたちが叫び始める。天高く燃えるキャンプファイアー、周りでゴブリンたちは踊り狂う。


 なんか、もはや宗教っぽい。オウリアム信仰……なんちゃって。



 ――――――――――――――――――――

 ここまで読んでください、ありがとうございます!

 第八話と第九話ではD視点が描かれます!

 ぜひ、勘違いの真実をご覧になってください!

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