重ね言葉禁止!!

クライングフリーマン

重ね言葉禁止!!

 ========== この物語はあくまでもフィクションです =========

「猛暑過ぎるから、新しい夏の名前考えてみた!」

 会議で、取締役が私を『取り締まり』した。

 書類の一枚目見ただけで、「舐めてんのかああああああああ!!」と胸ぐら掴んで言われた。耳が痛い。

 そりゃあ、言われるわなあ。タイトルは、朝起きた時の「思いつき」。

 前回の『異次元の殺し屋・万華鏡』。かっこいい、って評判の人気小説になったのになあ。

 当社は、戸川商店。

 時代の流れに乗って、いち早くWeb小説サイト『ヨムモン』を運営している。

 最初は大所帯だった。

 今は、元『小会議室』を改造した『執筆室』で正社員とバイト君が交替で毎日詰めて作品を発表している。

 もう『大先生』を『囲う』余裕なんかない。

 だから、本物のユーザーに交じって、『スタッフユーザー』が書いて投稿、体裁を保っている。

 規約は、ほぼ昔のまま。バージョンアップは金がかかるのだ。

 昔の社員には、プログラマやSEあがりの者もいたが、『割に合わない』と、皆退社。

 引き継げる人間なんかいやしない。

 ユーザーには、なんやかんやでポイントが付く。

 ポイントの計算・集計も正社員の仕事だ。

 バイト君は、サボるからだ。

 作品を書くのも、作品のポイント集計も『換金処理』も正社員の仕事だ。

 3ヶ月分、集計が貯まるのもザラだ。たまに不平を言うユーザーがいるが、そういうのは、容赦無く『レベル』を落す。

 換金の『方程式』は、実は誰も知らない。

 誰もプログラムを弄れないからだ。

 ただ、『レベル』の設定は、画面出して、ユーザーIDとレベルを入力するだけ。

 バイト君は、『規約違反』チェックが担当だ。

 我々は、決められた、ルーチンワークをこなすだけ。

 話を戻そう。

 昨夜、飲み過ぎて、プロットだけしか出来ていなくて叱られたのだ。

 プロットとは、まあ、『設定と粗筋』だ。

 我々社員ユーザーは、一般ユーザーと違い、コンテスト上位入賞予定者なのだ。

『企画会議』の時は、プロットだけでいい。メモでもいい。だが・・・。

 上司のご機嫌を損ねると、ボーナスが減る。

 クビにはならない。だが・・・。

 メモには、『堂々夏』『おとこ夏』『バリ3夏』、エトセトラ、エトセトラ。


「お前な、『重ね言葉禁止!!』って何度言ったら分かるんだよ。『猛暑』はな、『暑すぎる』ことを言うんだ。『猛暑過ぎる』ってナンだ?『暑すぎる過ぎる』のか?どんな状態なんだよ!気象予報士に聞いて来い!!熱中症アラートとかセミも鳴かない35度とか、聞いたことないのか?ちゃんとしたキャンペーンやりたきゃ、文章の『重ね言葉』禁止!!アルコールも禁止だ!!昨日、飲み終わったのは何時だ?」

「ご・・・三時です。」

「もう帰らなくていい。残業48時間。寝言は小説書いてから言え!」

「はい。」

 取締役は頭から湯気出している。

「出来た!!『沸騰夏』だ!!」

 今度は『張り手』が」来た。

 ―完―


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

重ね言葉禁止!! クライングフリーマン @dansan01

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る