プロローグ N年後の君へ
プロローグ入れ忘れてました!
本当にすみません‼
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蝉がミンミンとうるさく鳴く夏休み
「りょうへーい!はやく~」
「まってよ~
…ねぇ!まって~」
この日、男の子は友達に置いて行かれて不貞腐れていた
少し遅れて公園にたどり着くも、既に友達の姿はなかった
完全に起こったぞモードになった男の子は公園のベンチに座ろう為に向かう
「ん?せんきゃくさん、だ…」
そこにいたのは白いワンピースを着た一人の少女だった
夏というのに雪白な肌
被っている麦わら帽子が風で揺れる
この世界に生まれて数年
彼は初めて美しい、そう思ったのかもしれない
言葉が続かない
「あの…?」
「うへぇ!」
いきなり声をかけられて変な声が出る
それに心臓が急にうるさくなる
自分でもなんか変だなとは思いながらも、彼はまだこの感情に気づかない
相手も困惑しているのだろう
首をきょとんと傾けてこちらを見ている
そんな仕草ですら男の子を赤くさせる
どれほどの時間がたったのだろう
数分だったかもしれないし数十分だったのかもしれない
男の子は意を決した
「ぼくと、あそんでください!」
「いいよ」
「やっぱりダメかー…いいの⁉」
「わたしもヒマだったし」
「ともだちでもないのに?」
「もうともだちでしょ
なにする?」
勇気を出したはいいもののその後のことを考えてなかった男の子には死活問題だった
ここで嫌われたら終わる確信があった
「うみ、いこう」
男の子のいた街から海は近いわけではなかった
幸いなことに良平にはお金とバスの知識だけはあったので海には何事もなく行ける
問題は目の前の少女がOKを出すか
「じゃあ、いこっ」
「んへ?」
男の子は驚いていた
自分が突拍子もないことを言った自覚はあった
断られるだろうと内心思っていた
それなのにあっさり承諾された
しかもバス代も自分で出すと言われた(子供からしたら大金だったため)
二人っきりのバスの中、一番後ろの広い席に二人で座る
道中三十分となかなかに長い道のり
初対面の女の子と話せるほどコミュニケーション能力があったわけではない男の子にとっては少女を退屈させる地獄の時間になると予想していた
「じゃあおやすみ、スヤァー」
そんな予想と相反して座ってすぐに睡眠に入る少女
男の子は今まで会ったことのない人間すぎて驚いていた
(それにしてもかわいいなー)
少女の寝顔を見て最初に出てきた感想だった
自分の周りには全然いない、大人しくて掴みどころのない美少女だった
(ほっぺやわらかそう)
手が伸びる
伸びるが触る前に良心が働く
これで目を覚ましたら悪いなー
だけど悪心も働く
少しぐらい大丈夫でしょ
結果、手が伸びては引っ込み、引っ込んでは伸びてを繰り返していた
どのくらい繰り返していたのだろう
ふとバスが揺れる
ほんの少しの揺れ
ただそれだけだった
コトンと男の子の肩に少女の頭が乗る
「ふみゃぁ!」
あまりにも突然だったため大きなリアクションを取る
恥ずかしいくらい大きなリアクションだった
幸いなことに乗客は男の子と少女以外は誰もおらず、その少女も寝ている
そう思い隣の少女を見ると、小刻みに震えている
起こしたことを悪く思うと同時に、起きて聞かれたことを恥ずかしく思う
「ふふっ!ふみゃぁ!って…ねこじゃないんだから」
「うぅぅぅ!はずかしいぃぃ」
「…ほっぺくらい、さわってもおこらないからね」
「うぅ…へ?」
「じゃあおやすみ」
また少女は眠りにつく
男の子はいつ頃から起きていたのか、そればかり考えていた
だから気づかなかったのだろう
起きていたのになぜ少女は男の子に倒れかかったのか
今となっては誰にも分からないが、ただ少女の耳は微かに赤みを帯びていた
「ついたー!」
バス停から降りた男の子は開幕一番に叫ぶ
それは海の美しさに対してか、はたまた結局勇気が出なかったことに対する後悔か
そのすぐ後に少し不機嫌そうな少女が下りてくる
そんな顔も海を見た瞬間晴れやかになる
「すごい!すごいね!はやくいこ!」
そう言うと少女は小さな手で男の子の手を引っ張る
柔らかくて冷たい手
なのに体は熱くなる
夏だからだろうか
「う、うん」
小さなころの男の子には照れることしかできなかった
二人は砂浜で砂の山を作って、波打ち際で水をかけあって
めいいっぱい遊んだ
それでも終わりの時間というのはやってくる
日が沈み始める
昼は真っ青だった海も赤くなる
男の子は海でぐしゃぐしゃになった足を拭くこともできずそのまま靴を履く
あまりにも気持ち悪いが今日一日の楽しさを考えたらお釣りがくるほどだと思う
「もうかえる?」
「バスがきちゃうからね」
そんな少女はまだ足を海につけている
海風が彼女に吹く
麦わら帽子とワンピースを押さえる少女は夕日に映えて美しかった
「わたしね、とおくにひっこすの」
突然の告白に男の子は固まる
「…もうあえないってこと?」
「わからない」
今までの男の子だったら駄々をこねていただろう
だけどこの時は納得できていた
こんなに美しい、妖精のような人が現実に入れるわけがないと
「でも、いやだなぁ」
砂浜に染みを作る
もう会えないかもしれないのに顔が見れない
自分でも情けないと思っていた
そんな時いつの間にか男の子の目の前に少女はやってきて
「ちゅっ」
男の子の髪を上げてキスをする
あまりに突然のことで放心していると少女は続けて話す
「わたしね、あなたのことが…すき」
「ふぇ…?しゅ、しゅき?」
「うん」
「なんで?ぼく、すきとかわかんないよ」
「わたしもわかんない
なんで、きみのことすきになったのか
きみはどう?」
「ボクは…」
目の前の少女をしっかりと見る
夕日よりも赤くなっている彼女の顔を見て、ようやく気付く
「ぼくも、すき」
そう言うと彼女の顔が晴れ渡る
それと同時に強くハグされる
自分の心臓があまりにもうるさく(しずかにして!)と思う
思っていたが、彼女の心臓もうるさいことに気づき少し安堵する
「じゃあかえろっか」
「…ねぇ!なまえ、おしえて」
「ぼくは、あずま りょうへい!きみは?」
「わたしはね、――」
それか男の子、いや良平と少女は手を繋ぎながら帰った
少女は「まだこのまちにいれるからあそぼう」と言うことだった
この日から二人でずっと遊んだ
公園で、良平の家で、時には遠くで
本当に彼女がいなくなるとは思わずに
夏休みも半分を過ぎた頃、少女は突然
「もう、おわかれする」
幼い頃の良平には耐えきれなかったのだろう
最後に言った言葉は「またね」でも「すき」でもなかった
「もうしらない!」
そう言って家に走った
少女の、最後の言葉も聞かず
そうして話はN年後に繋がる
白いウェディングドレスに身を包んだ彼女を隣で見て、当時を思い出す
「そう言えば初めて会った頃も白いワンピースだったな」
「ふふっ何年前の話してるの?
それに良平、覚えてなかったじゃん」
「高校の時の話はやめてくれよ」
「まぁ私も高校の時の話はやめてほしいかも」
「どっちも拗らせてたからなー」
「でも、あの日再会できてよかったよ
危うく他の女子に取られちゃうところだったし」
「間違いないね」
まぁ結局、ここまで来れたのだ
終わり良ければ全て良しだろう
「新郎新婦、そろそろです」
「「はーい」」
自分たちの晴れ舞台が始まろうとしていた
そんな中、良平は話題に上がった高校時代を思い出す
入学式のあの日、俺は運命の出会いをしたのだった
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